センシティブライフスタイル

前身は、スマートシニアビジネス倶楽部として、SSBCのHPの補完として、伊東個人のログとして活用。その後、SSBCHPのSEOを上げるためには障害となるということで、現在のタイトルに変更し、ブログに思いをログしていた。連綿とした思いのログであり、今後のCOLABA、SLSOの結節点となるだろう!

第2回シニアメンバー懇親会

第2回シニアメンバー懇親会

2020年1月9日木曜日

合成生物学はこうして地球を“回復”させる!

ENVIRONMENT2019.12.23 MON 17:00
6つの視点から読み解く、合成生物学はこうして地球を“回復”させる!:MEND THE EARTH#2
環境問題をはじめとする人間が残した「爪痕」がそこかしこに拡がっている現在、急速な発展を遂げる「合成生物学」は、ダメージを負った地球を回復させる新たな手立てとなりつつある。操作された微生物に仕事を担わせることで課題解決に応用されている合成生物学の事例を、“地球のため”の6つの視点から紹介する。(雑誌『WIRED』日本版VOL.35より転載)
TEXT BY SANAE AKIYAMA
SPECIAL THANKS TO HIROSHI M.SASAKI
MIRAGEC/GETTY IMAGES
マイクロプラスティック、公害物質、地球温暖化ガス──。いまや人間が地球に残した「爪痕」はそこかしこに拡がっている。人間の活動がもたらした環境破壊、そして崩れつつある生態系をテクノロジーは打開することができるのだろうか?
現在、急速な発展を遂げる「合成生物学」は、創薬をはじめとする人間の進歩のためだけでなく、ダメージを負った地球を回復させる新たな手立てとなりつつある。すべての生命を、遺伝子の檻から解き放つ合成生物学。これを環境問題解決に応用する際の手法として主に考えられるのが、「微生物の特性を実用的な目的で工学的に操作すること」だ。
人の手によって操作された微生物が“仕事”をするのに必要となるエネルギー源は、再生可能な栄養分。つまり合成生物学の環境問題への応用は、クリーンでサステイナブルな解決法だといえるのだ。いま世界中で進んでいる、合成生物学の応用事例を「農業改善」、「食糧問題」、「環境汚染」、「生物多様性」、「エネルギー」、「マテリアル」の6つの視点から紹介しよう。

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AGRICULTURE

農業改善のカギは「根」にあり?

現在、世界の食料供給の約半分は「合成窒素肥料」に依存している。窒素肥料は温室効果ガスの約5%を占める亜酸化窒素に分解され、大気に放出されたり、海に流れ込み、世界の海域に500カ所以上ある生物の生息不可能な「デッドゾーン」を拡大させたりしている。
「Pivot Bio」は、穀物の根と共生して栄養を送り込む微生物の能力を遺伝子改変で強化し、空気中の窒素を肥料として吸収させることに成功。またソーク研究所は、植物の根を地中の奥深くまで成長させる遺伝子の特定・強化により、二酸化炭素を長期間地中に貯蔵させ、豊かな土壌の実現を可能にした。これらの技術は地球温暖化対策や、人口増加に対応する食料や燃料の供給につながるだろう。

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FOOD

ラボ生まれの「タンパク質」がぼくらを救う!

「Solar Foods」は、遺伝子改変された微生物で“自然な”タンパク質「ソレイン」を合成している。牛肉タンパク質1kgのために15,500ℓの水が必要であるのに対し、ソレインなら10ℓの水で済む。生成に必要となるのは、主に空気中の二酸化炭素、水、そして電気だ。発酵に似たプロセスで微生物にこのタンパク質を合成させ、最後にその微生物を熱処理すれば全粒粉の見た目と味がするソレインの出来上がりだ。
「Impossible Foods」は、肉の味をつくるために鉄含有分子「ヘム」を生成する植物の遺伝子を微生物に挿入し、合成ヘムの大量複製に成功。これを植物性のタンパク質に混ぜ合わせ、動物の肉に似せた合成肉がすでに販売されている。
関連記事:牛肉そっくりの「合成肉」でハンバーガーができるまで──奇妙な「科学」の裏側と、安全性を巡る攻防

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ENVIRONMENT / POLLUTION

標的となる環境汚染物質を特定せよ!

健康リスクが懸念されている有機フッ素化合物の一種「パーフルオロアルキル化合物」および「ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)」は、1950年代からさまざまな製品に使用されてきた。「Puraffinity」は、微生物にセルロース膜を生成させ、その膜に標的となる汚染物質に結合する分子受容体を付着させることで、PFASや農薬、医薬品などに含まれる有毒物質を飲料水や排水から除去することを可能にした。
これまで除去が難しかった特定のホルモンや重金属なども、フィルターのカスタマイズで対応可能になる。汚染物質除去を担う微生物のエンジニアリング「バイオレメディエーション」も、多数の研究機関で実験が進んでいる。

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BIOLOGICAL DIVERSITY

もはや「絶滅」は過去のもの?

気候変動による生息地の縮小や外来種による侵略、伝染病などで「生物の多様性」が脅かされつつある昨今。「Revive & Restore」が提案するのは、絶滅種や絶滅危機生物の遺伝子保全のための遺伝子編集技術の使用だ。
例えば、伝染病で絶滅が危惧されているクロアシイタチへ病原菌の耐性をもつ飼育下繁殖フェレットの遺伝子を挿入したり、海水温上昇による白化や汚染に強いサンゴの遺伝子を組み込んでサンゴ礁の多様性を保全したり、生態系に打撃を与える外来種のネズミを遺伝子ドライヴ技術で駆除することなどが考えられている。絶滅したケナガマンモスやリョコウバトの遺伝子を現存する近縁種に組み込んで復活させるなど、応用も期待されている。

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ENERGY

化石燃料に代わる新たな「バイオ燃料」

エネルギーのための化石燃料使用が二酸化炭素排出量の大部分を占めるなか、「LanzaTech」は嫌気性微生物が産業廃棄ガスからエタノールを自然につくり出すことを発見した。このエタノールの生成効率を遺伝子改変で向上させた結果、産業廃棄ガスから有用なバイオ燃料や化学物質の製造が可能になった。クリーンで安価に生産できるバイオ燃料については、さまざまな研究機関が模索している最中だ。
海中に生息する「ハロモナス菌」の遺伝子改変によって海水と糖から次世代ジェット燃料を合成する実験や、微細藻類の代謝経路を変えて光合成を効率化させることでバイオ燃料の生産性や二酸化炭素吸収率を向上させるといった実験が行なわれている。
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MATERIAL

「資材」をもっとクリーンに!

「bioMASON」は、微生物を利用して建設資材の「れんが」を“成長”させている。この微生物は、水中のカルシウムイオンから歯の成分に似た炭酸カルシウムを生成し、砂粒子を接合させて、れんがをつくり出す。暗闇で光るれんがや公害物質を吸収するれんがの生成も可能だ。焼き固める必要はなく、室内温度で3~5日放置すれば自然に固まる。
また、「Pili」はあらゆる色素に調整できるタンパク質(酵素)を合成し、微生物の遺伝子に組み込むことに成功。微生物の発酵原理を利用することで、再生利用可能な砂糖などの栄養源から、質がよく汚染物質を出さない染料や顔料を生成している。染色による水質汚染が問題視されるファッション産業での活用に期待だ。
投稿者 Jugoro 時刻: 13:14 0 件のコメント:
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未来社会・ネットワーク社会

NECが掲げる未来像「意志共鳴型社会」を実現する4つのテクノロジー

EXPERIENCE NETWORK

誰かの「体験」がわたしのものになる?

情報ではなく、体験を共有するネットワークであるエクスペリエンスネットは、人々が「夢」を見つけて、チャレンジに溢れた社会を実現するために、個々人の能力や興味を最大限引き出すテクノロジーです。感覚も含む「体験」が流通されれば、例えば、「スポーツ選手」という夢をもった子どもが、その夢の実現のために必要な能力や生じうる困難の一端をエクスペリエンスネットで垣間見ることができるようになるでしょう。
このテクノロジーが、多くの可能性を秘めた子どもたちの「やりたいこと」や「向いていること」への入り口を複数開き、「夢」の選択肢を拡げるはずです。これをNECが構想するのも、コンピューター技術と通信技術の両面を併せもっているからです。視覚・聴覚情報だけでなく、五感+αで体験するためにどんな情報をネットワークにのせるべきか、心理学者や身体学者など幅広い分野の協力を仰ぎながら開発を進めていきたいですね。

DIGITAL TRUST

シームレスな「相互信頼」を育む基盤

「意志共鳴型社会」を支えるテクノロジー、まさにそのベースとなるのがデジタルトラスト基盤です。誰かと意志を共鳴させ、自律性をもったコミュニティをつくるためには、あらゆる制約や価値観、習慣の違いに左右されることなく、シームレスにつながり合える「土台」が必要になります。ブロックチェーン技術など、NECとしてもすでに社会基盤として耐えうる処理能力をもった技術の開発や実用化を進めています。
とはいえ、「基盤づくり」はNEC単体でできることではないと思います。目指すのは、数値化・効率化を図るのではなく、多様な価値観を抱える個々人を尊重し合える社会です。そのために企業や地域の枠を超えて、あらゆるプレイヤーと基盤づくりから共創することが重要だと考えています。こうした基盤を含めた技術の進化によって、先祖や偉人などとの時間を超えたつながりも実現するかもしれません。

CONTEXT SENSING

「足るを知る」を伝えるために取るべきデータとは

「IoT」という言葉の普及が示すように、センシング技術はすでにわたしたちの暮らしを取り囲んでいますよね。しかし、「意志共鳴型社会」の実現のためには、既存のものと違うデータを取り、新しい計測方法とその表現方法を検討すべきだと思っています。現状では、簡単に数値化できるものに意識が向かいがちですが、例えば「奥さん怒ってるな」みたいな感覚って単に数値化できない「感じ取る」ものですよね。既存のデータの裏側にある、文脈や感覚も含めてセンシングするというのがこれからのチャレンジです。
もしこれが実現すれば、「足るを知る」という感覚を技術によって伝えることもできるはずです。例えば、生産者の思いや物語をセンシングできれば、自分以外の他者の存在や商品を形づくった自然環境に想いを馳せながら、「自分良し、相手良し、世間良し、未来良し」の四方良しな生活を送ることができるでしょう。

FUTURE DESIGN TOOL

「選択」に関心と責任をもち続けるために

NECは「AIが答えさえも提示する未来」を望んではいません。AIは好ましいとされる選択肢を提示するまでで、最終的な「選択」をするのは変わらず人間であると考えています。そのためにテクノロジーができることとして重要なのは、人が行なう「選択」への関心とその先の共創に責任をもち続けるような仕組みをつくることです。
未来デザインツールでは、説明可能なアルゴリズムによって選択肢を導く背景を明らかにすることで、自らが選ぶ未来にコミットし続ける意識を醸成しようとしています。もし、このツールが個人ではなく「都市」単位で使われれば、街づくりや政策の決定に対して、より有機的に市民を巻き込むことができるでしょう。個人で利用すれば、年齢・性別に関係なく自らの能力と興味に最適な選択肢が提示され、自己成長をもたらす手応えのある経験を可能にしてくれるでしょう。

持続可能な社会の実現を目指す林野庁推進「ウッド・チェンジ・ネットワーク」に賛同マクドナルド店舗の一部 
日本マクドナルド株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO:日色 保)は、林野庁が推進する国産木材の積極的活用に向けたネットワーク「ウッド・チェンジ・ネットワーク」に賛同し、国産木材を外装材として積極的に活用した「マクドナルド 五条桂店」を本日12月16日(月)より営業いたします。今後も、12月下旬に営業を開始する「マクドナルド 牛久店」など、新規出店、改装、建て替えをする全国のマクドナルド店舗において、可能な部分で国産木材を外装および構造材の一部で積極的に活用してまいります。

マクドナルドは、より良い未来のために皆様とともに社会的課題や環境問題に取り組む“Scale for Good(スケール・フォー・グッド)”というグローバルの枠組みを構築し、マクドナルドの強みとスケール(規模)を活用することで持続可能な社会の実現を目指す取り組みを行っております。このたび、「ウッド・チェンジ・ネットワーク」の趣旨に賛同し、新規出店、改装、建て替えする店舗の軸組を、これまでの鉄骨から木材に切り替えたり、外装の一部で木材を使うなど、可能な部分で国産木材を積極的に活用します。

「ウッド・チェンジ・ネットワーク」とは、
林野庁が2019年2月に立ち上げた活動です。戦後に日本において造成した人工林資源が充実して利用期を迎え、国産材の需要拡大が急務となっているにもかかわらず、木材があまり使われていない現状の打破、また人工林および林業に携わる人々にとっても持続可能な林業を実現することが課題となっています。この活動においては、木材利用に関する課題の特定や解決方策、木材利用に向けた普及のあり方等について協議、検討や、木材を利用しやすい環境づくり、日本全国に木材利用を広げていくプラットフォームづくりに向けて取り組みが行われています。

マクドナルド 五条桂店では、店舗外壁の装飾として、国産木材を70m2配置し、黒をベースとした外壁に、木のぬくもりのある色合いが印象的になっています。また、京都市市街地景観整備条例に則して、落ち着きのある色合い、庇のある外壁デザインなどとも相まって、街の雰囲気とも調和のとれた店舗外観となっています。

林野庁木材利用課長の長野氏はこのようにコメントしています。
「マクドナルドの取り組みは、ウッド・チェンジ・ネットワークのメンバーによるウッド・チェンジの具体例であり、本件をきっかけに、業種・用途など多方面で木材利用が進み、日本の森林と地域が活性化することを期待しています」

マクドナルドは、変わりゆく社会やお客様のニーズに合わせて進化し続けてまいります。お客様の声を伺いながら、昨日より今日、今日より明日と向上し続け、“a better McDonald's”となることを目指してまいります。
投稿者 Jugoro 時刻: 12:46 0 件のコメント:
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人生100年時代に起こること

人生100年時代に起こること

許斐 健太:東洋経済 記者
東京五輪のうたげの後東京五輪のうたげの後、日本経済はどんな道を歩むのか。

野村総合研究所が作成した「未来年表2020〜2100」によると、国内の未来予測で前提となるのが高齢化と人口減少だ。2025年には団塊、日本経済はどんな道を歩むのか。野村総合研究所が作成した「未来年表2020〜2100」によると、国内の未来予測で前提となるのが高齢化と人口減少だ。2025年には団塊の世代がすべて75歳以上に。人生100年時代の到来とともに、膨張する介護費や医療費が重くのしかかる。さらに35年には全都道府県で総人口が減少し、53年には日本の人口が1億人を割る見通しだ。

人口減少を補うには、「外国人労働者の受け入れ、高齢者の就労継続、さらにデジタルの活用の3つがカギを握る」と、野村総研未来創発センターの桑津浩太郎センター長は指摘する。

外国人労働者は増えつつあるが、中国などとの国際的な人材獲得競争の激化が予想され、人手不足を補塡するハードルは高い。高齢者の就労継続では、企業側の受け入れ体制とともに、個人のスキルの再構築が課題となりそうだ。
さらにAIなどデジタル化をいかに進めるか。技術革新による自動化の低コスト化に加え、AIとの共存へ、社会制度や慣習の見直しが問われることになる。



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投稿者 Jugoro 時刻: 12:42 0 件のコメント:
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5Gで世界は一変、CES 2020の見どころ

5Gで世界は一変、CES 2020の見どころを一挙紹介(参照元:JDIR)

世界最大の民生技術の展示会CES(正式な読み方は「シーイーエス」)。来年度(2020年)も年明け早々、1月7~10日の4日間、米ネバダ州のラスベガスで開催されることが決まっている。
 2016年に主催団体の名称が「CEA」(Consumer Electronics Association)から「CTA」(Consumer Technology Association)に変わったことからも推察されるように、CESはすでに「家電の見本市」ではない。軍事技術以外は何でもありの、最先端デジタルテクノロジーが主役のビッグイベントであり、データ時代の趨勢を掴む意味では決して外すことのできない存在と言っても過言ではない。
 昨年度の来場者は世界中から約18万人、出展社は4500社を超える。これだけ大規模なイベントなので、会場はラスベガスコンベンションセンター(LVCC)があるTech Eastを中核に、Tech West(サンズホテル、ベネチアンホテルなど)、Tech South(アリアホテル、MGMホテル、MGMパークシアター)など、ラスベガス市内の主要なホテルのコンペンション施設、ボールルーム、シアターなどを貸し切って行われている。
 ちなみに再来年の2021年から、Tech Eastは道路を隔てて南側に建設中のLVCCの新ホールに移転し、積年の課題だった手狭感・混雑感が緩和されることが期待されている。
 筆者は毎年、コストをかけ、ラスベガスまで行ってCESに参加しているのだが、なぜ毎年わざわざ現地に出かけるのか? と質問されることがある。答えは簡単。自分にとってCESは定点観測をするための展望台なのだ。一見関連のなさそうな「点」と「点」とを「線」でつなげる眼力(洞察力)を養うためのトレーニング場なのである。
「コネクテッド」時代から「データ」時代へ移行する現在、最先端のデジタルテクノロジーは、単に企業の金儲けのためだけではなく、「社会課題をどう克服するか」というSDGsやESGの視点も十分考慮されて開発されるべき段階となっている。例えば、「安心安全なデジタル社会の実現」という社会課題と「住みやすいまちづくり」という社会課題同士の関連があるように、それぞれの課題に紐づくテクノロジーも、「ブロックチェーン」や「スマートシティ」も、連鎖していると考えるのが自然だろう。つまり、社会課題の単位で物事を考えることが習慣化されると、「木」(個別のテクノロジー)は「森」(まとまった社会課題解決のイノベーション)に見えてくるし、テック企業のふるまいに対しても善悪の判断がつきやすい。
 今回は、過去を遡ること数年間のCESで拾い集めた数々の「伏線」を手がかりにして、間近に迫った「CES 2020」の動向や見どころについてガイドしていこう。

米クアルコムが半導体独占、5Gを巡る勢力図に注目

CES 2020の注目リストのナンバーワンは「5G」で決まりと言っても過言ではあるまい。あらゆるモノが高速・大容量・低遅延の5Gネットワークにつながることで解決できる社会課題は多い。接点(タッチポイント)としてまず重要なのは、個人が持つスマホ端末が3G・4Gから5Gへ刷新されることである。
 5Gの商用サービスが本格化するのは、日本でもサービスが開始される2020年春以降になると想定されるが(ヨーロッパ、中国、韓国では一部地域で5Gがスタートしているが、現状、ミリ波を使った本格的なサービスにはなっていない)、CESで存在感を放ち、今年秋までに5G対応スマホを発表しているサムスン、LG、ファーウェイ、ソニー、シャープなどがCES 2020で5G対応の新製品(実質的な5G戦略商品)をリリースするのは確実な情勢だ。
 そして、5Gスマホの心臓部である半導体(SoC:システムオンチップ)は、米クアルコム1社が供給をほぼ独占している状況であることに特に留意したい。
 5G半導体への参入を強くコミットしていたインテル(CES 2018で参入を表明)が開発を断念してしまった現在、クアルコムの半導体「Snapdragon」(スナップドラゴン)が市場シェア100%であり、満を持してこの12月4日に発表された最新の「Snapdrgon865」(ハイエンド向け)、「Snapdragon765/765G」(ミドルレンジ向け)が上記のスマホメーカー群だけでなく、現時点で5G対応スマホを発表していないグーグルPixelシリーズやアップル(2019年4月に知的財産権を巡る訴訟でクアルコムと苦渋の和解を選択)iPhoneシリーズにも搭載されることは想像に難くない。
(参考)「5Gスマホでシェア100%」クアルコム社長の自信の根拠(「日経ビジネス」2019/9/19)

 その他、5G関連で気になるのは中国のファーウェイの動向だ。米トランプ政権がファーウェイの製品はスパイ行為に利用されていると強く批判し、米国のみならず日本のような安全保障上の同盟国での調達が事実上禁止された詳しい経緯は、誌面の関係でここでは触れない。直近の12月5日に、今度はファーウェイが自社製品の調達禁止は憲法違反であると主張し、米連邦通信委員会(FCC) をルイジアナ州ニューオリンズの控訴裁判所に提訴するという動きを見せている。

 このような極めてセンシティブな状況な中で、ファーウェイや、さらに中国政府の色合いが濃いZTEがCES 2020でどのような打ち出しをするのか。社会課題でもある情報セキュリティへの不安を解消する方向で努力をするのか、米国や日本の市場から撤退することを前提に我が道を進むのか。CES2020はその試金石になるだろう。

5G導入を全体に開発が進むモビリティ分野

次の注目ポイントは5G導入を前提に開発が進むモビリティ(自動運転、運転支援、MaaS:Mobility as a Service)の分野だ。モビリティの進化は、喫緊の社会課題である交通渋滞や事故を減らすだけでなく、地域の分断や孤立といった根深い課題を解消し、「住みやすいまちづくり」を実現するのに大いに貢献する。
 CES 2018でトヨタの「e-Palette」がコンセプトを提示し、CES 2019で雨後の筍のようにフォロワーが出現したMaaS志向のモノスペースの自動運転車両は都市モビリティの1つの解答としてさらに定着を見せるだろう。
 自動運転技術としては、2017年に画像チップ(GPU)メーカー、エヌビディアのCEOジェンスン・ファンが自社開発の自動運転専用プロセッサ(SoC)を提げてCESに颯爽と登場して以来、一足飛びにレベル4(特定条件下での完全自動運転)以上の自動運転を狙う、業界の垣根を超えた企業間競争の「台風の目」としてこのマーケットを席巻してきたことは記憶に新しい。
 しかし、昨年2018年秋の米中貿易摩擦による中国への輸出規制や暗号資産(仮想通貨)のマイニング需要の崩壊で、エヌビディアは本業の画像チップの売り上げが低迷し、株価も急落。CES 2019での打ち出しも極めて地味なものになり、レベル4以上の自動運転への期待は一気にしぼんでしまったというのが昨年までの流れである。
(参考)勢いはここまで? 暗雲立ち込めた自動運転の未来(「IoTToday」 2019/1/25)

 加えて2019年11月、ウーバーがアリゾナ州テンピで起こした死亡事故(2018年3月)の原因が米運輸規制当局から発表されたが、現状の自動運転技術では、条件変化に対するAIのアルゴリズム(例:人間は横断歩道以外に道を横断しない)や異常時に人間に運転を引き渡す技術に脆弱性があることが改めて明らかになり、そもそも運転の主体が人間からシステムに移行するレベル3以上の自動運転は実用化には時期尚早である、との見方が支配的になりつつあるようだ。
 このような空気の中で迎えるCES 2020では、インテル傘下のモービルアイ(イスラエル)が中核技術を提供するADAS(先進運転支援システム)や昨年のCES 2019のトヨタ記者会見でトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のギル・プラットCEOがお披露目した高度安全運転支援機構「ガーディアン」のようなセーフティの要素技術、つまり「レベル2(特定条件下での自動運転)+安全志向での運転支援技術」が新たに自動運転技術のガイドラインになる可能性が高いのでは、と思われる。

5Gの恩恵を大きく受ける「XR」

モビリティと並んで5G導入の恩恵を大きく受けるのが、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)/複合現実(MR)のいわゆる「XR」の領域だ。ゲームやスポーツ中継放送といったエンターテインメント領域だけでなく、モノづくりの現場や機械の保守整備での作業効率化や先端医療などでのソリューションが期待されるテクノロジーでもある。
 マイクロソフトが今年の3月、バルセロナで開催されたモバイル技術の世界的イベント「MWC 2019(Mobile World Congress 2019)」で発表した「ホロレンズ2」(Hololens 2)は、目の前の現実とCGを融合して体験できる複合現実(MR:Mixed Reality)を実現するデバイスであり、透視型のレンズを通じてバーチャルな3Dオブジェクトをあたかもそこに存在するかのように映し出すことができる「魔法の眼鏡」である。
 アメリカのSF映画『マイノリティ・レポート』(スティーブン・スピルバーグ監督、2002年公開)の世界観を実現するデバイスといえば映画好きにはピンと来やすいかもしれない。
(参考)Introducing Microsoft Hololens 2(YouTube)

 ホロレンズ2は片目2Kの解像度と広い視野角を持ち、ハンドトラッキング操作(ジェスチャー操作)の自由度が先代の「ホロレンズ」より大幅に改善されているという触れ込みである(ちなみに搭載される5G対応の半導体は、Windows環境で動くクアルコム製のスラップドラゴン850だという)。

「ホロレンズ2」は今年11月初旬に全世界で法人向けに発売されたばかりであり、CES 2020では大掛かりなプロモーションが行われる可能性が高い。

 また、5G半導体の総本家クアルコムもつい最近、12月初旬になって、5G対応のAR/ VR専用のチップセット(SoC)「スナップドラゴンXR2」(Snapdragon XR2)を発表している。2020年の第1四半期には専用ヘッドセットを発売予定ということなので、ブースで没入感が高い新製品のお披露目があるかもしれない。

拡大するドローンの活用領域、JDI一強は変わるのか?

次にドローン技術だが、これも5Gの導入と普及の兼ね合いでホビー用から商業用へのシフトが加速し、様々な社会課題に対応するソリューションが期待される。送電線・パイプラインなどのインフラや農場牧場などの監視、建設現場の測量、山間部などへの荷物の配送など、ヘリ型(回転翼)の無人ドローンが活躍する領域が拡大していくことが確実で、CES 2020でも関連の展示が増えるだろう。

 企業の勢力分布をみると、Phantomシリーズで知られる中国企業DJIが、GPSを活用したフライトコントローラの卓越性が支持されて世界シェアの7割以上を占めている。しかし、ファーウェイの5G端末や周辺機器調達禁止の流れを受けて、今年の5月には、米国土安全保障省が中国製ドローンの飛行情報が中国政府に送信されている可能性があることを理由に米国内の組織に中国製ドローン使用に対する警戒を呼びかけたことが大ブレーキになっている。加えて米議会でも中国製ドローン使用禁止の法案化(American Drone Security Act 2019)という動きも出てきている。
(参考)DRONEII、米ドローンメーカーマーケットTOP10発表、DJIが圧倒的シェア(DRONE)

 現時点でDJIの対抗馬になりうるのは、新製品Anafiシリーズのラインナップを拡充しつつあるフランスの企業、パロット(Parrot)と目されており、米国内では少なくとも商用の市場では今後DJIからの代替調達が進む可能性がある。
 また「空のライドシェア」のコンセプトで2023年に事業化を目指すウーバー・エアのような野心的なプロジェクトも昨年から注目され始めており、CES 2019ではベル・ヘリコプター(オスプレイの共同開発で有名)が会場に有人のeVTOL(電動垂直離着陸機)のプロトタイプを持ち込んで来場者の度肝を抜いた。
(参考)未来は不透明、8K、ドローンの持続的イノベーション(「IoTToday」2019/2/8)

 今年、注目を集めそうなのが「空飛ぶクルマ」の製造企業、独ボロコプター(Volocopter)のeVTOLだ。同社は今年10月にシンガポール政府の支援の下、ペイロード200kgの条件下で有人デモ飛行に成功しており、CES 2020でも同様のデモンストレーションを行う可能性が高いと見ている。

(参考)Volocopter air taxi fles over Singapore’s Marina Bay(YouTube)

「食事」関連のソリューションに注目

最後に筆者が大きな関心を寄せているのが、ヘルスケア/フィットネス(ウェアラブル機器&サービス)とライフ(クッキング&フード)の分野である。これらの分野も5Gとセットで成長性が期待できるだけでなく、心身の不健康、具体的には不眠によるストレスや成人病(米国では肥満)の抑制など社会課題の解決にも強く紐づく分野である。
 ヘルスケアの分野では、昨年のCES 2019で、P&Gが「ブランドパーパス」を全面に押し出して初出展したことが大きな話題となった。
(参考)P&GがCESに初出展。美容の破壊的イノベーションとは(「IoTToday」2019/02/01)

 この領域ではCES 2018からCES 2019にかけて「睡眠」が主要なテーマとなり、快眠サポートのIoTデバイスや脳波に働きかけて質の高い睡眠を引き出すという触れ込みのギアがフィリップス、ノキアや幾多のベンチャー企業から提示されていた。
 今年の動向を占うと、後述するライフ分野との絡みや米フィットビット(Fitbit)のような体調管理サービスの隙間を埋めるという意味で、写真撮影するとAIが自動的にカロリー計算をしてくれるような形の「食事」関連のソリューションが脚光を浴びるのではないかと推察される。
 ライフ分野では、本業の自動車部品や電動工具ではなく、ハイテク調理機器メーカーとしても存在感を増している独ボッシュが推進する先進調理支援システム「ACAS(Advanced Cook Assistance System)」の前評判が高い。
 同時に、植物由来の人工肉を開発しバーガーキングに納入したことで話題になった米インポッシブル・フーズ(グーグルやビル・ゲイツが出資)、ビーガン対応として同じく人工肉を開発し、やはりTGIフライデーズにもハンバーガー用のパテを提供している米ビヨンド・ミート(ツイッターやビル・ゲイツが出資)の出展が注目される。

調理の時間短縮と省力化は家族やパートナーとのコミュニケーションを促進するのに役立つだけでなく、仮に牛肉を人工肉に置き換える(味覚や食感も含めて)ことに成功すれば、肥満防止やCO2排出量の削減という社会課題の根本的な解決にも繋がっていくはずだ。

航空会社のトップが基調講演を行うインパクト

CESの展示と並ぶ1つのハイライトが基調講演だ。主催者のCTAから発表されている主要な5社(ダイムラーAG、サムスン電子、デルタ航空、キビ、NBCユニバーサル)について、スケジュールと想定されるテーマを整理しておいたので、ご参照いただきたい。
基調講演は毎年、開催日初日の午前中の枠が「真打ち」と見なされている。CES 2019でIBMのジニ・ロメッティCEOが登壇したその枠(1月7日8:30~、ベネチアンホテル・パラッツオボールルーム)で今回プレゼンテーションを行うのはデルタ航空のCEO、エド・バスティアンだ。
 2016年に同社のCEOに就任したバスティアンは、主催者CTAのコメントによれば「世界で最も信頼性の高い航空会社として、デルタの主導的地位を拡大しつつ、その世界的な規模を拡大し、空中および地上での顧客体験を向上させてきた」という。
 デルタ航空の最近の戦略を分析すると、自社を単なる「航空旅客業」ではなく、「旅のおもてなし業」として捉え直すことでブランドとしての差別化を加速させようとする意図が強く感じられる。デルタは顧客のカスタマージャーニーについて、「旅を思い立ってから、旅の当日に空港に行き、旅の目的地で目的を果たし、最後に旅の思い出を振り返る(例:SNSに写真や動画を上げる)まで」と規定し、生体認証、仮想現実と拡張現実(VR/AR)、モバイルテクノロジーなどを駆使して、顧客のトータルの旅の利便性・快適性・娯楽性を高めようと考えているようだ。
 実際、デルタ航空は昨年、日本のNECの顔認証技術を導入してアトランタ空港で「顔認証チェックイン」を実用化した実績もある。またCES 2019のIBM CEO、ジニ・ロメッティの基調講演ではバスティアン自身が特別ゲストとして登壇し、活用できていない「ダークデータ」を有効活用し、いかに顧客体験の向上に結びつけるかという趣旨のコメントを残しているが、それが今回の基調講演の「伏線」になっている。
 いずれにしても本来テック企業とは見なされてこなかった航空会社のトップが基調講演にリストに入ること自体がCES史上始まって以来初めてであり、そのインパクトはCES 2017のアンダーアーマー(スポーツ用品の製造販売業)のケビン・プランクCEOに匹敵しうるものだ。
 基調講演をライブでぜひもう1社聞きたいという方には、1月8日9:30~のキビ(Quibi)の創業者ジェフリー・カッツェンバーグとメグ・ホイットマンCEOの講演を強く推す。キビは日本の読者には馴染みが薄いかもしれない。ドリームワークスの元CEO、カッツェンバーグが、イーベイやヒューレット・パッカードでCEOを歴任しテック界NO.1の女性富豪の呼び声高いホイットマンと共同で今年4月に創設したモバイル向け動画ストリーミングサービスだ。「プレミアムコンテンツを短時間でつまみ食い」がコンセプトのキビの新サービスに対し、ディズニー、ワーナーメディア、21世紀フォックスなど名だたるコンテンツ企業が1億ドル(約108億円)もの出資を行ったと報道され、一躍、全米のテック業界の話題をさらった。
 基調講演はホイットマンとカッツェンバーグが揃い踏みとなることが発表されていて、「キビが変える短編動画のコンテンツ体験」が45分のプレゼンテーションの主題になることだろう。
 それ以外の企業についても、講演のテーマはテクノロジーや新製品そのもののアピールというよりは、それらによってエクスペリエンスがいかに変わるか、ライフスタイルはどうなるべきかという顧客視点、ビジョンオリエンテッドな内容になるはずで、CESの最近の基調講演の文脈を踏まえたものになると想定される。
CESで痛感、日本のモメンタムが大きく低下
 最後に一言。CESに長年通っていて痛感するのは、民生技術における技術立国・日本の著しいモメンタム(勢い感)低下だ。
 ソニー、パナソニック、シャープ、キヤノンなど日本発のグローバル企業の旗色が良かったのはせいぜい2012年まで。民生技術の花形が大画面液晶テレビからスマートフォンに完全に移行した2014年以降はアンドロイド、iOSというプラットフォームでスマイルカーブの入り口(企画開発)と出口(サービス)を掌握した米国勢に覇権が完全に移動した。

部品調達、製造、納入/販売においてコスト競争で後手に回った多くの日本企業はCESの檜舞台から漸次退場し、韓国と中国の企業が日本の抜けた穴をはるかに上回る規模とスピードでそのポジションを確固たるものとしつつあるように見える。
 スタートアップの育成の土俵でも全く同様の現象が見られる。Tech Westのサンズ会場の1階にはスタートアップ企業を専門的に収容する「ユーレカパーク」(Eureka Park:「ユーレカ」は「見つけたぞ!」「わかったぞ!」という意味のギリシア語)と呼ばれる小間ブース主体の展示会場がある。ここでもモメンタムを感じるのはフランスを中心としたスイス、オランダの欧州勢、続いて中国、台湾、韓国の東アジア勢、それにイスラエルであり、日本企業の存在感は薄い。
 CESの会場外でもショックを受けたことがあった。CES 2019の会期中、ジャケットを買いに訪れたプレミアム・アウトレット・サウスで案内看板を目にしたときのことである(下の写真)。
言語の順序は、アウトレットモールにとっての顧客としてのプライオリティを意味すると思われる。東アジアにおける「中国・台湾 > 韓国 > 日本」という序列は、最近のCESで日本からの視察者が感じる、肩身の狭さと相通ずるものがあるとは言えないだろうか。
 しかし、変化はチャンスであると著者は思う。5G時代になって企業間競争のゲームルールが変わり、事業の成長とSDGsやESGなど社会課題解決の両立を高次元で達成できる企業が最後に勝ち残るとしたら、日本企業にも均等に逆転のチャンスはあるはずだ。
 過去のCESで見つけた小さな「点」と繋がって行くはずの、新しい可能性に溢れる「点」の数々を探しに、年明け早々期待に胸を膨らませラスベガスに旅立とうと思う。
投稿者 Jugoro 時刻: 12:00 0 件のコメント:
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「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」

「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」2020年の助成先を決定
パナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、世界的な社会課題である「貧困の解消」に向けて取り組むNPO/NGOの組織基盤強化に助成する「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の2019年募集事業の助成先24団体、助成総額2,700万円を決定し、2019年12月16日(月)に公表しました。夏に公募した2019年度の募集には70団体から応募があり、その中から「海外助成」12団体、「国内助成」12団体に助成が決定しています。
2030年までに達成を目指す持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」には、目標1に「貧困の解消」が掲げられており、新興国・途上国における絶対的貧困はもちろんのこと、先進国においても相対的貧困の深刻化による格差など、その解決に向けた取り組みが急務となっています。「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」では、貧困の解消を目指すNPO/NGOが持続発展的に社会変革に取り組めるよう、「海外助成」「国内助成」の2つのプログラムで、組織課題を明らかにする組織診断や、具体的な組織課題の解決、組織運営を改善するための組織基盤強化の取り組みに助成します。このたび選ばれた新規助成18団体のうち、16団体は組織診断から取り組みます。
「海外助成」では、アジア、アフリカ諸国の広範囲にわたり、現地の持続可能な発展に向けた教育支援、保健医療支援、女性や若者の就労支援、衛生環境・まちづくり、テロや紛争の解決支援、子どもの権利擁護などの社会課題解決に取り組む団体に助成します。
「国内助成」では、子どもの貧困、思いがけない妊娠・出産の相談、シングルマザー・母子家庭支援、外国にルーツのある子どもや親への支援、LGBTの生きやすい社会づくり、精神障がい者の権利擁護、生活困窮者支援、地方の教育格差など、多世代、多岐にわたる社会課題の解決に取り組む団体に助成します。
また本ファンドの前身である「Panasonic NPOサポート ファンド」では、最終年度となる「環境」「子ども」「アフリカ」分野の継続助成に、6団体、助成総額800万円が決定。2020年には「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」と合計で30団体に総額3,500万円の助成をします。
パナソニックは、NPO/NGOが戦略的に社会課題の解決をはかるためには、その組織基盤強化が重要であるとの認識のもと、2001年に「Panasonic NPOサポート ファンド」を設立しました。当社が創業100周年を迎えた2018年度からは助成プログラムを「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」に刷新し、このたびの助成先を含め406団体、5億897万円を助成しています。
パナソニックは、今後も社会において重要な役割を果たすNPO/NGOの皆様とともに、組織基盤強化の取り組みを通じて市民活動の持続的発展、社会課題の解決促進、社会の変革に貢献していきます。

投稿者 Jugoro 時刻: 11:34 0 件のコメント:
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市民社会の評価

SDGsジャパン、日本政府の「SDGs実施指針」改定を受けた市民社会の評価を発表

2019年12月20日、日本政府「SDGs推進本部」は、「持続可能な開発目標」(SDGs)に関する日本の国家戦略である「SDGs実施指針」を改定しました。一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)(東京都千代田区)は、この指針改定について、政策提言を積極的に行ってきました。この立場より、以下、改定された「SDGs実施指針」に関する市民社会としての評価と見解を示します。
ジェンダー平等が優先課題の1番目に明記されたことを歓迎します。
マルチ・ステークホルダー・プロセス及び地域との連携重視の視点が盛り込まれたことを評価します。
旧「実施指針」につけられていた「付表」が「アクションプラン」に置き換えられたことに懸念を表明します。
「バックキャスティング」手法の導入による大胆な変革を期待します。
「貧困の根絶と格差の是正」を、今後のSDGs実施関連施策で最重要項目とすること、さらに「防災・減災」および「地域の経済・社会の活性化と環境の持続可能性の確保」も明示することを期待します。

1. ジェンダー平等が優先課題の1番目に明記されたことを歓迎します。
今回の指針(以下、改定指針)では、「ジェンダー平等」が、政府が定める 8 つの「優先課題」のうちの一つとして、「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」という形で明記されました。また、「すべての課題への取組において主流化する必要のある分野横断的課題として取組を推進していく」として、取り組みの方向性も明示されました。さらに、「実施のための主要原則」の「(2)包摂性」の箇所においても、ジェンダー統計の充実を含むジェンダー主流化の重要性が明記されました。これは、改定指針の骨子案について政府が実施した「パブリック・コメント」募集に対して提出された 303 件のパブリック・コメントのうち、28%がジェンダー関連であったこと、また、SDGs ジャパンをはじめ、様々な団体や関係者などが、ジェンダーについて明記するように求めたことを反映したものです。私たちは、「ジェンダー平等」が優先課題の1番目に明記されたことを歓迎します。

2. マルチ・ステークホルダー・プロセス及び地域との連携重視の視点が盛り込まれたことを評価します。
改定指針では、政府の役割に関する記述が一定、増大するとともに、円卓会議などを活用したマルチ・ステークホルダー・プロセスの強化がうたわれています。私たちは、この課題について、円卓会議の活用と共に、国連の「持続可能な開発」プロセスで様々な非国家主体の参画の仕組みとして位置づけられている「メジャー・グループその他のステークホルダー」(MGoS)のような仕組みを導入することも求めていました。本指針ではそこまでは入りませんでしたが、円卓会議を活用して様々な手法での「マルチ・ステークホルダー・プロセス」の実施に希望が持てる内容となっています。また、「主なステークホルダーの役割」において、SDGsにかかわるステークホルダーの役割が以前より詳細に規定され、その中で「市民社会」において、社会の中で取り残されがちな人々(当事者)の声を反映させることの重要性についても、一定、記述がなされました。私たちは、これについても歓迎します。

3. 旧「実施指針」につけられていた「付表」が「アクションプラン」に置き換えられたことに懸念を表明します。
旧「実施指針」には、SDGsにかかわる政府の各種施策が、数値目標なども含めた形で「付表」としてまとめられていましたが、改定指針では、これが、毎年6月および12月の推進本部会議で採択される「アクションプラン」に置き換えられました。現在の「アクションプラン」には、SDGsにかかわる各種施策の予算額等は書いてありますが、それぞれの施策が掲げる数値目標などは書かれていません。また、「バックキャスティング」については、その考え方を踏まえる、との記述がなされたことは評価できるものの、日本政府としてグローバル指標を尊重しながら「2030年目標」を定め、また、現状を政府自らが評価して、それを目標達成のための実施戦略にフィードバックする、といったことについては明記されませんでした。SDGs達成まで11年しかないところ、目標の設定と現状の評価、それを踏まえての戦略形成は不可欠です。私たちは、「付表」を単に既存の「アクションプラン」に置き換えるということであれば、これに強い懸念を表明します。また、「アクションプラン」の在り方を変え、各課題の目標とその達成のための施策を示すことで、政府としてどのような成果を目指すのかを明示することを提案します。

4. 「バックキャスティング」手法の導入による大胆な変革を期待します。
本年9月にニューヨークで開催された「国連SDGサミット」の成果文書「SDGサミット政治宣言」においても、「飢餓、ジェンダー、格差、生物多様性、環境破壊、海洋プラスチックごみ、気候変動、災害リスクへの対応に遅れがみられる」との指摘がおこなわれ、厳しい危機意識と共に、2020-30年の「行動の10年」が呼び掛けられました。本指針の「ビジョン」で示されているように、日本が国内外に「先駆者」として「日本の『SDGsモデル』」を発信するのであれば、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を基本に、高いレベルの「2030年目標」を掲げ、グローバル指標に基づく各ターゲットの現状と目標のギャップを分析して評価し、目標の実現に向けて資金を配分し、取り組みを進めていく「バックキャスティング」を大胆に取り入れていくことが必要不可欠です。それは、国民・市民や、日本のSDGs実践に注目する海外の関係者に対して、SDGsに関する日本の取り組みを「見える化」することにもつながります。

5. 「貧困の根絶と格差の是正」を、今後のSDGs実施関連施策で最重要項目とすること、さらに「防災・減災」および「地域の経済・社会の活性化と環境の持続可能性の確保」も明示することを期待します。
改定指針について私たちが最も残念に思うのは、「貧困の根絶と格差の是正」について、具体的な施策が書かれなかったことです。貧困の根絶と格差の是正は、SDGsの中でも最も重要な目標の一つです。また、ベルテルスマン財団/持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)とOECDの双方から日本の課題として指摘されている目標の1つが「ゴール10不平等」であることからも、格差の問題への取組は喫緊の課題です。私たちは、SDGsにおける貧困・格差の是正の重要性に鑑み、社会的排除と貧困の関連性を想起しつつ、今後、この分野にかかわる施策について、SDGsへの取り組みの重要項目とすることを求めます。また「仙台防災戦略」でも示された「防災・減災」と、「地域の経済・社会の活性化と環境の持続可能性の確保」も、重要な施策領域として位置づけることを期待します。
SDGsジャパンでは、他のすべてのステークホルダーとともに、SDGs達成に向けた具体的な行動を推進していきます。また、日本政府に対しては、他のステークホルダーと共にSDGs達成に向けて積極的な取り組みをより積極的・発展的に行うとともに、市民社会をはじめとするステークホルダーと、対話をベースとした協力・連携を積極的に進めていくことを期待します。
全文は以下よりダウンロード可能です。→https://prtimes.jp/a/?f=d27673-20191220-2078.pdf
投稿者 Jugoro 時刻: 11:31 0 件のコメント:
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イギリス社会はいま!

イギリス社会は「経済資本」「文化資本」「社会関係資本」により「7つの階級」に分かれていて、最下層を蔑視 .(参照元:ダイヤモンドオンライン)
『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)は、社会学者マイク・サヴィジらがBBC(英国放送協会)の協力を得て実施した階級についての大規模調査Great British Class Survey :GBCS)の結果をまとめたものだ。原題は“Social Class in the 21st Century(21世紀の社会階級)”。
 本書の主張を簡明に述べるなら、イギリス社会は「経済資本」「文化資本」「社会関係資本」によって階級化されているということになる。私は『幸福の「資本論」』(ダイヤモンド社)で、幸福の土台(インフラストラクチャー)を「金融資本Financial Capital」「人的資本Human Capital」「社会資本Social Capital」で説明した。サヴィッジの「経済資本」は「金融資本」に、「社会関係資本」は「社会資本」に相当するが、「人的資本」の代わり「文化資本」が階級を決める重要な要素として取り上げられている。
 これはもちろんどちらが正しいということではないが、なぜこのようなちがいが生じるのか、よい機会なのですこし私見を述べてみたい。

「富の山が高くなれば、麓から頂上を目指すのが困難になる」

経済学でいう人的資本は労働市場における富の獲得能力であり、それは所得によって示される。イギリスでも所得の分布は二極化していて、「所得上位10%の収入は下位10%の約17倍であり、上位1%の所得が下位の約124倍である」というデータが示される。だがそれにもかかわらず、サヴィッジは「所得は主要な経済資本ですらない。富裕層では特にそうだ」と述べる。
 その根拠は、過去30年間の社会全体の富=経済資本の蓄積が莫大だからだ。貯蓄・住宅・家財・貴金属などの個人資産の総額は、1980年の2兆ポンド(約270兆円)から2005年にはインフレを考慮しても3倍の6兆ポンド(約810兆円)相当になった。対GDP比の総資産の割合も、同じ25年間で300%未満から500%超へと約2倍になっている。その結果、人口約6500万人のイギリスにはミリオネア(純資産で100万ドル超)が200万人もいるという。イギリスの世帯数は約2600万だから、ミリオネアを世帯主とするならば、およそ13世帯に1世帯が億万長者の家に暮らしていることになる。
 社会全体の経済資本=純資産を、サヴィッジは「富の山」と形容する。この数十年でイギリス社会の富の山は大きく成長し、その結果、上位1%の富裕層の1人あたり平均資産は1976年の70万ポンド(約9450万円)から、2005年にはインフレ調整後でも3倍の223万ポンド(約3億円)に膨れ上がった。それに比べて下位50%のひとびとの平均資産は5000ポンド(約68万円)から1万3000ポンド(約176万円)になったにすぎないという。
 まさに「1%vs99%」の構図に見えるが、ここには数字のマジックがある。ちょっと計算すればわかることだが、イギリスの上位1%の資産は1976年には下位50%の140倍で、それが30年後の2005年には172倍になった。上位1%の資産が30年間で3.2倍に増え、下位50%の資産は2.6倍に増えた、といっても同じだ。高齢化によって資産格差は広がるから、それを考慮すれば、この程度のちがいを「許しがたい不平等」と見なすかどうかは意見が分かれるだろう。
 資産3億円(上位1%)と資産176万円(下位50%)ではとてつもない格差に思えるが、これは絶対値を比較しているからだ。100円が倍になれば200円で、100万円が倍になれば200万円だ。富裕層と貧困層が「平等」に富を増やしても、絶対額の差は開いていく。社会全体がゆたかになれば、「グローバル資本主義の陰謀」などなくても(絶対額での)格差は自然に拡大していくのだ。
 本書で説得力があるのは、「富の山が高くなれば、麓から頂上を目指すのが困難になる」との主張だ。山頂までの距離がさほど遠くなければ、努力すれば自分でもたどりつけると思えるだろう。だが「富の山」がエベレストのようにそびえたっているのなら、ほとんどのひとは登山そのものをあきらめてしまうにちがいない。これが欧米や日本などのゆたかな先進国で「格差」が社会問題になるひとつの理由だろう。

人的資本を「経済資本」や「社会関係資本」のなかに“隠蔽”しているのではないか


 日本と同じくイギリスでも、富の形成に親からの援助の有無の重要性が増している。「欧米では子どもは成人すれば親とは別人格」とされてきたが、いまやイギリスの親の29%(およそ3人に1人)が別居している子どもに経済的援助しており、子育て(孫育て)で家計が苦しくなる45歳から54歳の子どもに限れば、親からの援助を受けている割合は45%(およそ2人に1人)にのぼるという。
 これは興味深い指摘だが、それを根拠に「人的資本=所得の格差を考慮する必要はなくなった」とするサヴィッジの主張には異論がある。
 単純な事実として、資産とは日々の所得から生活経費を差し引いた「純利益」を蓄積し、金融市場や不動産市場で運用した結果だ。大きな人的資本があれば純利益も増え、長期的には富は拡大していく。
 親からの援助についても話は同じだ。子どもに経済援助できるほどゆたかなのは、親が人的資本を使って資産形成に成功したからだろう。経済格差は、大きな人的資本を持つ富裕な親から、同じように大きな人的資本を持つ子どもへと資産が受け渡されることで拡大していく。そのように考えれば、親からの贈与は人的資本の重要さを示しているともいえる。

 サヴィッジは、フランスの経済学者トマ・ピケティ(『21世紀の資本』)の議論を受けて、「経済資本は(所得の差ではなく)、長期にわたる蓄積の結晶としてのみ理解できる」と述べる。だが、ピケティのいうように「資本から得られる収益率が経済成長率を上回っている」としても、それは「人的資本には意味がない」との主張を正当化できない。サヴィッジは、「結果(経済資本)だけを比較すれば原因(人的資本)はどうでもいい」と述べているように私には思える。
 リベラルな社会においては、人種、性別、国籍、身分、性的志向などで個人を評価することは禁じられる。従業員の評価・選別の基準として許容されるのは「学歴・資格・経験(実績)」だけで、これが人的資本を構成する。日本でも最近ようやく(一部で)理解されるようになったが、メリトクラシー(能力主義)は「差別のない社会」の前提なのだ。
 サヴィッジは、人的資本の主要な要素のひとつである学歴を「社会関係資本」に含め、「教育レベルが高いほど、エリートグループや専門職グループの知人がいる割合も大きくなる」「どの職業グループにも知人がいない「学歴なし」の人々は著しく孤立している」と述べている。私の理解では、これは大きな人的資本が金融資本を生み出すと同時に、社会資本(人的ネットワーク)もつくり出すからだ。

 本書では「大学間の格差――高等教育と能力主義」の章で、教育格差が社会階層に結びつく構図が分析される。イギリスではオックスフォード、ケンブリッジ、ロンドンの3つの大学とそのカレッジが「黄金の三角」と呼ばれ、その卒業生が社会の支配層を形成している。なぜ一流大学の卒業生が、政治家・官僚・企業幹部として社会的・経済的に成功しているのか。それは大学のブランドによって高い知能=大きな人的資本を保証されているからであり、同じように大きな人的資本を持つ友人・知人とネットワーク(人脈)をつくるからだろう。だがここでもサヴィッジは、結果(教育レベルが高いとエリートの人脈ができる)だけを論じて、その原因(エリートは大きな人的資本を持っている)を無視しているように思える。
 私がこのことにこだわるのは、幸福の「3つの資本」のなかでは、人的資本こそがもっとも重要だと考えるからだ。親の遺産で暮らしているがずっと失業している若者(大きな経済資本がある)と、大学を卒業したばかりで貯金はまったくないものの、グローバル企業に高給で採用された若者(大きな人的資本がある)で、「経済資本が重要なのだから前者の方が恵まれている」と考えるひとはいないだろう。だとしたらなぜ、こんな当たり前のことを考慮しないのか。
 私は、これは意図的なものではないかと疑っている。格差の議論に人的資本を持ち込むと、それは能力=知能の格差へとつながっていく。これはリベラルな社会では「政治的に正しくない(PCでない)」とされているため、人的資本を「経済資本」や「社会関係資本」のなかに“隠蔽”しているのではないだろうか。

イギリス社会は階級によって分断されている

「文化」が階級と結びついていると論じたのはフランスの社会学者ピエール・ブルデューで、上流階級は大きな文化資本Cultural Capitalを持っており、それによって社会的な権力・権利にアクセスできるとした。これがイギリスの階級分析に大きな影響を与えたのは、革命によって身分制が一掃されたフランスとは異なり、いまだに王族・貴族のいる古い社会構造が温存されているからだろう。
 サヴィッジはブルデューの議論を引き継いで、「高尚な文化資本」が階級の決定にいまも大きな影響を与えているとする。博物館に行ったりオペラを鑑賞したりするのが上流階級で、そうした「高尚なもの」になんの関心もなく、ソープオペラ(メロドラマ)やリアリティTVに夢中になっているのが下層階級というわけだ。
 これだけなら話はシンプルだが、それ以外に「新興の文化資本」があるとされる。オックスブリッジを卒業したエリートの若者たちも、いまでは正装でオペラを観に行ったりしない。その代わり彼ら/彼女たちは、アジアやアフリカ、中南米を旅したり、音楽フェスティバルに参加したり、現代アートやインディペンデント映画を楽しんだりする。
 イギリスの上流の若者たちの価値観はアメリカの若いエリートと同じで、おそらく日本の若者とも共通するだろう。「ポップ」や「クール」はグローバル化し、世界共通になっているのだ。
 欧米の上流社会では、アートとワイン(あとは西洋史と建築、クラシック)について語れることが「マウンティング」の手段になっている。だが「高尚な文化」が階級を形成するほど大きな影響力を持つのは、イギリスに特有の現象ではないだろうか。すくなくとも日本では、相手の文化資本(クラシックが好きか、ロックが好きか)を「階級」と結びつけるひとはほとんどいないだろう。
 よく知られているように、イギリス英語には「U」と「non-U」の区別がある。UはUpper Class(上流階級)の略で、王室やオックスブリッジで話される英語だ。それに対して「non-U」はコックニー(下町訛り)など、労働者階級が話す英語だとされる。
 日本にも方言があるがこれは「地方の言葉」で、上京した若者は(関西弁を例外として)みな標準語(東京弁)を話すようになる。なぜならその方が有利(便利)だからだ。それに対してイギリスでは、「階級(クラス)」によって異なる言葉が話されている。なぜイギリスの労働者階級は、上流階級の英語を話すようにならないのだろうか?
 これは、アメリカの黒人が独特の「黒人英語」を話すのと同じで、言葉がアイデンティティになっているからだろう。アメリカ社会が人種(白人/黒人)で分断されているように、イギリス社会は階級(上流・中流階級/労働者階級)によって分断されているのだ。
 このような社会だからこそ、イギリスでは「文化資本」によって自分がどの階級に属しているかを示すことが重要になる。「階級の概念そのものが、自我、人格に対して根本的な脅威を引き起こす」とされるイギリスが特異なのだ。
 日本で文化資本が階級と結びつかない理由は、「高尚な文化(ハイカルチャー)」が輸入品だということもあるかもしれない。「高尚な文化」とは、ルネサンス以降のヨーロッパで生まれたもののことだ。
 日本でもクラシックやオペラのコンサートに通うひとがいるが、それは「階級」を示す指標ではなく、たんに「西洋文化が好き」と思われるだけだ。かといって歌舞伎や能・狂言がハイカルチャーと見なされるわけではなく、アニメやマンガ、ゲームなどのサブカルチャーと等価に扱われている(これは日本のサブカルチャーが、「ジャパン・ポップカルチャー」として(欧米)世界で広く受け入れられたことの影響だろう)。このような国に住む私たちが、階級社会イギリスの「文化資本」を理解することは困難だ。
 断っておくと、私は「高尚な文化」を理解するイギリスの方が優れていると考えているわけではない。すべての文化が「サブカル化」して等価になった日本の方が、リベラル化・世俗化する世界のこれからの姿を示しているのではないだろうか。

「階級」があいまいになり大多数の中流層がアイデンティティに不安を感じている

『7つの階級』では、イギリス社会を「エリート」「確立した中流階級」「技術系中流階級」「新富裕労働者」「伝統的労働者階級」「新興サービス労働者」「プレカリアート」の7つに分けている。だがそのなかで階級(クラス)がはっきりしているのは最上層のエリートと最下層のプレカリアートだけで、残る5つの階級は流動的で、上下関係がはっきりしているわけでもないという。
 エリート(上級国民)は「富が富を生むひとたち」、プレカリアート(下級国民)は「社会的・経済的に排除されたひとたち」のことだ。彼らは「スカム(くず)」「チャヴ」などと呼ばれている。
 イギリスのメディアでは、「ポバティ(貧困)ポルノ」と呼ばれる記事や番組が大量につくられている。ポバティポルノとは「貧困層の一部の人々の素行がどれだけ悪いかを興味本位に暴きたてる」もので、日本の「ナマポ(生活保護受給者)批判」をより大規模に、えげつなくしたものと考えればいいだろう。
 そこで描かれるのは、イギリス社会には「奴隷のようにあくせく働く人」と「うまくサボる人」がいるという世界観だ。「収入の一部、あるいはすべてを福祉手当に頼っている人々は、自分の「ライフスタイルの選択」として給付に過度に依存しているとする理解が一般化し、福祉手当受給者がドラッグや酒に浸り、いつも楽しく過ごすという安楽な生活を送るために、納税者の必死で働いて納めた税金が使われていると多くの人が考えている」とサヴィジはいう。
 なぜこんなことになったのか。それは皮肉なことに、かつてあった明確な「階級」があいまいになったからだ。
 イギリスでは「階級」がひとびとにアイデンティティを与え、それによって社会を安定させてきた。上流階級はイギリスを支配していたが、労働者階級も自分たちの生き方や働き方に誇りを持ち、「人間」として上流階級と対等だと思っていたのだ。
 だが階級を形成していた文化的、社会的な壁が失われ、社会が流動化したことで、大多数の中流層がアイデンティティに不安を感じるようになった。こうして、最下層のプレカリアートを蔑視・排除することで「中流」のアイデンティティを取り戻そうとしたのだとサヴィジはいう。これは、黒人(有色人種)を差別・排除することで「白人」としてのアイデンティティを守ろうとするアメリカの「白人至上主義者」の心理と同じだろう。
 問題を複雑にするのは、階級を否定し「みんな普通のひとたち」とするリベラルな態度が、プレカリアートをさらに追い詰めていることだ。なぜなら、「「みんな同じで上も下もない」という、普通について広く受け入れられている考え方は、最も不運な人も含めて、すべての人が自分の立場に責任を持つべきであるという意味に及び始めた」からだ。
 スコットランドの貧困地区で生まれ育った(白人)ラッパーのダレン・マクガーヴェイは、貧困問題を取り上げるときに自分たちにとって気分のいい物語だけを求めるリベラルの態度を、アフリカの野生動物を観光するサファリに例えて「ポバティサファリ」と批判した(『ポバティー・サファリ イギリス最下層の怒り』集英社)。
 左派は「新経済体制の創出、エリートの打倒、公共支出の拡大」あるいは「西洋社会で互いに重なり合い結びついて存在するさまざまな構造的抑圧や、資本主義に内在する象徴的暴力」についてきわめて雄弁に語る。だがその一方で、徹底的に避けられる話題は「自己責任」だ。
 その結果、「個人の役割と責任という考えは右派が独占している」とマクガーヴェイは嘆く。「自分たちの選択に一定の責任があると認めることで、ようやく多くの人は心の問題、身体的な病気、依存症から回復できる」にもかかわらず。
『7つの階級』と合わせて読むと、イギリス社会で何が起きており、確実にやってくる日本の未来がどうなるのかが理解できるだろう。
橘 玲(たちばな あきら)
投稿者 Jugoro 時刻: 11:29 0 件のコメント:
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