第2回シニアメンバー懇親会

第2回シニアメンバー懇親会

2020年1月9日木曜日

5Gで世界は一変、CES 2020の見どころ

5Gで世界は一変、CES 2020の見どころを一挙紹介(参照元:JDIR

世界最大の民生技術の展示会CES(正式な読み方は「シーイーエス」)。来年度(2020年)も年明け早々、1月7~10日の4日間、米ネバダ州のラスベガスで開催されることが決まっている。
 2016年に主催団体の名称が「CEA」(Consumer Electronics Association)から「CTA」(Consumer Technology Association)に変わったことからも推察されるように、CESはすでに「家電の見本市」ではない。軍事技術以外は何でもありの、最先端デジタルテクノロジーが主役のビッグイベントであり、データ時代の趨勢を掴む意味では決して外すことのできない存在と言っても過言ではない。
 昨年度の来場者は世界中から約18万人、出展社は4500社を超える。これだけ大規模なイベントなので、会場はラスベガスコンベンションセンター(LVCC)があるTech Eastを中核に、Tech West(サンズホテル、ベネチアンホテルなど)、Tech South(アリアホテル、MGMホテル、MGMパークシアター)など、ラスベガス市内の主要なホテルのコンペンション施設、ボールルーム、シアターなどを貸し切って行われている。
 ちなみに再来年の2021年から、Tech Eastは道路を隔てて南側に建設中のLVCCの新ホールに移転し、積年の課題だった手狭感・混雑感が緩和されることが期待されている。
 筆者は毎年、コストをかけ、ラスベガスまで行ってCESに参加しているのだが、なぜ毎年わざわざ現地に出かけるのか? と質問されることがある。答えは簡単。自分にとってCESは定点観測をするための展望台なのだ。一見関連のなさそうな「点」と「点」とを「線」でつなげる眼力(洞察力)を養うためのトレーニング場なのである。
「コネクテッド」時代から「データ」時代へ移行する現在、最先端のデジタルテクノロジーは、単に企業の金儲けのためだけではなく、「社会課題をどう克服するか」というSDGsやESGの視点も十分考慮されて開発されるべき段階となっている。例えば、「安心安全なデジタル社会の実現」という社会課題と「住みやすいまちづくり」という社会課題同士の関連があるように、それぞれの課題に紐づくテクノロジーも、「ブロックチェーン」や「スマートシティ」も、連鎖していると考えるのが自然だろう。つまり、社会課題の単位で物事を考えることが習慣化されると、「木」(個別のテクノロジー)は「森」(まとまった社会課題解決のイノベーション)に見えてくるし、テック企業のふるまいに対しても善悪の判断がつきやすい。
 今回は、過去を遡ること数年間のCESで拾い集めた数々の「伏線」を手がかりにして、間近に迫った「CES 2020」の動向や見どころについてガイドしていこう。

米クアルコムが半導体独占、5Gを巡る勢力図に注目

CES 2020の注目リストのナンバーワンは「5G」で決まりと言っても過言ではあるまい。あらゆるモノが高速・大容量・低遅延の5Gネットワークにつながることで解決できる社会課題は多い。接点(タッチポイント)としてまず重要なのは、個人が持つスマホ端末が3G・4Gから5Gへ刷新されることである。
 5Gの商用サービスが本格化するのは、日本でもサービスが開始される2020年春以降になると想定されるが(ヨーロッパ、中国、韓国では一部地域で5Gがスタートしているが、現状、ミリ波を使った本格的なサービスにはなっていない)、CESで存在感を放ち、今年秋までに5G対応スマホを発表しているサムスン、LG、ファーウェイ、ソニー、シャープなどがCES 2020で5G対応の新製品(実質的な5G戦略商品)をリリースするのは確実な情勢だ。
 そして、5Gスマホの心臓部である半導体(SoC:システムオンチップ)は、米クアルコム1社が供給をほぼ独占している状況であることに特に留意したい。
 5G半導体への参入を強くコミットしていたインテル(CES 2018で参入を表明)が開発を断念してしまった現在、クアルコムの半導体「Snapdragon」(スナップドラゴン)が市場シェア100%であり、満を持してこの12月4日に発表された最新の「Snapdrgon865」(ハイエンド向け)、「Snapdragon765/765G」(ミドルレンジ向け)が上記のスマホメーカー群だけでなく、現時点で5G対応スマホを発表していないグーグルPixelシリーズやアップル(2019年4月に知的財産権を巡る訴訟でクアルコムと苦渋の和解を選択)iPhoneシリーズにも搭載されることは想像に難くない。
(参考)「5Gスマホでシェア100%」クアルコム社長の自信の根拠(「日経ビジネス」2019/9/19)

 その他、5G関連で気になるのは中国のファーウェイの動向だ。米トランプ政権がファーウェイの製品はスパイ行為に利用されていると強く批判し、米国のみならず日本のような安全保障上の同盟国での調達が事実上禁止された詳しい経緯は、誌面の関係でここでは触れない。直近の12月5日に、今度はファーウェイが自社製品の調達禁止は憲法違反であると主張し、米連邦通信委員会(FCC) をルイジアナ州ニューオリンズの控訴裁判所に提訴するという動きを見せている。

 このような極めてセンシティブな状況な中で、ファーウェイや、さらに中国政府の色合いが濃いZTEがCES 2020でどのような打ち出しをするのか。社会課題でもある情報セキュリティへの不安を解消する方向で努力をするのか、米国や日本の市場から撤退することを前提に我が道を進むのか。CES2020はその試金石になるだろう。

5G導入を全体に開発が進むモビリティ分野

次の注目ポイントは5G導入を前提に開発が進むモビリティ(自動運転、運転支援、MaaS:Mobility as a Service)の分野だ。モビリティの進化は、喫緊の社会課題である交通渋滞や事故を減らすだけでなく、地域の分断や孤立といった根深い課題を解消し、「住みやすいまちづくり」を実現するのに大いに貢献する。
 CES 2018でトヨタの「e-Palette」がコンセプトを提示し、CES 2019で雨後の筍のようにフォロワーが出現したMaaS志向のモノスペースの自動運転車両は都市モビリティの1つの解答としてさらに定着を見せるだろう。
 自動運転技術としては、2017年に画像チップ(GPU)メーカー、エヌビディアのCEOジェンスン・ファンが自社開発の自動運転専用プロセッサ(SoC)を提げてCESに颯爽と登場して以来、一足飛びにレベル4(特定条件下での完全自動運転)以上の自動運転を狙う、業界の垣根を超えた企業間競争の「台風の目」としてこのマーケットを席巻してきたことは記憶に新しい。
 しかし、昨年2018年秋の米中貿易摩擦による中国への輸出規制や暗号資産(仮想通貨)のマイニング需要の崩壊で、エヌビディアは本業の画像チップの売り上げが低迷し、株価も急落。CES 2019での打ち出しも極めて地味なものになり、レベル4以上の自動運転への期待は一気にしぼんでしまったというのが昨年までの流れである。
(参考)勢いはここまで? 暗雲立ち込めた自動運転の未来(「IoTToday」 2019/1/25)

 加えて2019年11月、ウーバーがアリゾナ州テンピで起こした死亡事故(2018年3月)の原因が米運輸規制当局から発表されたが、現状の自動運転技術では、条件変化に対するAIのアルゴリズム(例:人間は横断歩道以外に道を横断しない)や異常時に人間に運転を引き渡す技術に脆弱性があることが改めて明らかになり、そもそも運転の主体が人間からシステムに移行するレベル3以上の自動運転は実用化には時期尚早である、との見方が支配的になりつつあるようだ。
 このような空気の中で迎えるCES 2020では、インテル傘下のモービルアイ(イスラエル)が中核技術を提供するADAS(先進運転支援システム)や昨年のCES 2019のトヨタ記者会見でトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のギル・プラットCEOがお披露目した高度安全運転支援機構「ガーディアン」のようなセーフティの要素技術、つまり「レベル2(特定条件下での自動運転)+安全志向での運転支援技術」が新たに自動運転技術のガイドラインになる可能性が高いのでは、と思われる。

5Gの恩恵を大きく受ける「XR」

モビリティと並んで5G導入の恩恵を大きく受けるのが、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)/複合現実(MR)のいわゆる「XR」の領域だ。ゲームやスポーツ中継放送といったエンターテインメント領域だけでなく、モノづくりの現場や機械の保守整備での作業効率化や先端医療などでのソリューションが期待されるテクノロジーでもある。
 マイクロソフトが今年の3月、バルセロナで開催されたモバイル技術の世界的イベント「MWC 2019(Mobile World Congress 2019)」で発表した「ホロレンズ2」(Hololens 2)は、目の前の現実とCGを融合して体験できる複合現実(MR:Mixed Reality)を実現するデバイスであり、透視型のレンズを通じてバーチャルな3Dオブジェクトをあたかもそこに存在するかのように映し出すことができる「魔法の眼鏡」である。
 アメリカのSF映画『マイノリティ・レポート』(スティーブン・スピルバーグ監督、2002年公開)の世界観を実現するデバイスといえば映画好きにはピンと来やすいかもしれない。
(参考)Introducing Microsoft Hololens 2(YouTube)

 ホロレンズ2は片目2Kの解像度と広い視野角を持ち、ハンドトラッキング操作(ジェスチャー操作)の自由度が先代の「ホロレンズ」より大幅に改善されているという触れ込みである(ちなみに搭載される5G対応の半導体は、Windows環境で動くクアルコム製のスラップドラゴン850だという)。

「ホロレンズ2」は今年11月初旬に全世界で法人向けに発売されたばかりであり、CES 2020では大掛かりなプロモーションが行われる可能性が高い。

 また、5G半導体の総本家クアルコムもつい最近、12月初旬になって、5G対応のAR/ VR専用のチップセット(SoC)「スナップドラゴンXR2」(Snapdragon XR2)を発表している。2020年の第1四半期には専用ヘッドセットを発売予定ということなので、ブースで没入感が高い新製品のお披露目があるかもしれない。

拡大するドローンの活用領域、JDI一強は変わるのか?

次にドローン技術だが、これも5Gの導入と普及の兼ね合いでホビー用から商業用へのシフトが加速し、様々な社会課題に対応するソリューションが期待される。送電線・パイプラインなどのインフラや農場牧場などの監視、建設現場の測量、山間部などへの荷物の配送など、ヘリ型(回転翼)の無人ドローンが活躍する領域が拡大していくことが確実で、CES 2020でも関連の展示が増えるだろう。

 企業の勢力分布をみると、Phantomシリーズで知られる中国企業DJIが、GPSを活用したフライトコントローラの卓越性が支持されて世界シェアの7割以上を占めている。しかし、ファーウェイの5G端末や周辺機器調達禁止の流れを受けて、今年の5月には、米国土安全保障省が中国製ドローンの飛行情報が中国政府に送信されている可能性があることを理由に米国内の組織に中国製ドローン使用に対する警戒を呼びかけたことが大ブレーキになっている。加えて米議会でも中国製ドローン使用禁止の法案化(American Drone Security Act 2019)という動きも出てきている。
(参考)DRONEII、米ドローンメーカーマーケットTOP10発表、DJIが圧倒的シェア(DRONE)

 現時点でDJIの対抗馬になりうるのは、新製品Anafiシリーズのラインナップを拡充しつつあるフランスの企業、パロット(Parrot)と目されており、米国内では少なくとも商用の市場では今後DJIからの代替調達が進む可能性がある。
 また「空のライドシェア」のコンセプトで2023年に事業化を目指すウーバー・エアのような野心的なプロジェクトも昨年から注目され始めており、CES 2019ではベル・ヘリコプター(オスプレイの共同開発で有名)が会場に有人のeVTOL(電動垂直離着陸機)のプロトタイプを持ち込んで来場者の度肝を抜いた。
(参考)未来は不透明、8K、ドローンの持続的イノベーション(「IoTToday」2019/2/8)

 今年、注目を集めそうなのが「空飛ぶクルマ」の製造企業、独ボロコプター(Volocopter)のeVTOLだ。同社は今年10月にシンガポール政府の支援の下、ペイロード200kgの条件下で有人デモ飛行に成功しており、CES 2020でも同様のデモンストレーションを行う可能性が高いと見ている。

(参考)Volocopter air taxi fles over Singapore’s Marina Bay(YouTube)

「食事」関連のソリューションに注目

最後に筆者が大きな関心を寄せているのが、ヘルスケア/フィットネス(ウェアラブル機器&サービス)とライフ(クッキング&フード)の分野である。これらの分野も5Gとセットで成長性が期待できるだけでなく、心身の不健康、具体的には不眠によるストレスや成人病(米国では肥満)の抑制など社会課題の解決にも強く紐づく分野である。
 ヘルスケアの分野では、昨年のCES 2019で、P&Gが「ブランドパーパス」を全面に押し出して初出展したことが大きな話題となった。
(参考)P&GがCESに初出展。美容の破壊的イノベーションとは(「IoTToday」2019/02/01)

 この領域ではCES 2018からCES 2019にかけて「睡眠」が主要なテーマとなり、快眠サポートのIoTデバイスや脳波に働きかけて質の高い睡眠を引き出すという触れ込みのギアがフィリップス、ノキアや幾多のベンチャー企業から提示されていた。
 今年の動向を占うと、後述するライフ分野との絡みや米フィットビット(Fitbit)のような体調管理サービスの隙間を埋めるという意味で、写真撮影するとAIが自動的にカロリー計算をしてくれるような形の「食事」関連のソリューションが脚光を浴びるのではないかと推察される。
 ライフ分野では、本業の自動車部品や電動工具ではなく、ハイテク調理機器メーカーとしても存在感を増している独ボッシュが推進する先進調理支援システム「ACAS(Advanced Cook Assistance System)」の前評判が高い。
 同時に、植物由来の人工肉を開発しバーガーキングに納入したことで話題になった米インポッシブル・フーズ(グーグルやビル・ゲイツが出資)、ビーガン対応として同じく人工肉を開発し、やはりTGIフライデーズにもハンバーガー用のパテを提供している米ビヨンド・ミート(ツイッターやビル・ゲイツが出資)の出展が注目される。

調理の時間短縮と省力化は家族やパートナーとのコミュニケーションを促進するのに役立つだけでなく、仮に牛肉を人工肉に置き換える(味覚や食感も含めて)ことに成功すれば、肥満防止やCO2排出量の削減という社会課題の根本的な解決にも繋がっていくはずだ。

航空会社のトップが基調講演を行うインパクト

CESの展示と並ぶ1つのハイライトが基調講演だ。主催者のCTAから発表されている主要な5社(ダイムラーAG、サムスン電子、デルタ航空、キビ、NBCユニバーサル)について、スケジュールと想定されるテーマを整理しておいたので、ご参照いただきたい。
基調講演は毎年、開催日初日の午前中の枠が「真打ち」と見なされている。CES 2019でIBMのジニ・ロメッティCEOが登壇したその枠(1月7日8:30~、ベネチアンホテル・パラッツオボールルーム)で今回プレゼンテーションを行うのはデルタ航空のCEO、エド・バスティアンだ。
 2016年に同社のCEOに就任したバスティアンは、主催者CTAのコメントによれば「世界で最も信頼性の高い航空会社として、デルタの主導的地位を拡大しつつ、その世界的な規模を拡大し、空中および地上での顧客体験を向上させてきた」という。
 デルタ航空の最近の戦略を分析すると、自社を単なる「航空旅客業」ではなく、「旅のおもてなし業」として捉え直すことでブランドとしての差別化を加速させようとする意図が強く感じられる。デルタは顧客のカスタマージャーニーについて、「旅を思い立ってから、旅の当日に空港に行き、旅の目的地で目的を果たし、最後に旅の思い出を振り返る(例:SNSに写真や動画を上げる)まで」と規定し、生体認証、仮想現実と拡張現実(VR/AR)、モバイルテクノロジーなどを駆使して、顧客のトータルの旅の利便性・快適性・娯楽性を高めようと考えているようだ。
 実際、デルタ航空は昨年、日本のNECの顔認証技術を導入してアトランタ空港で「顔認証チェックイン」を実用化した実績もある。またCES 2019のIBM CEO、ジニ・ロメッティの基調講演ではバスティアン自身が特別ゲストとして登壇し、活用できていない「ダークデータ」を有効活用し、いかに顧客体験の向上に結びつけるかという趣旨のコメントを残しているが、それが今回の基調講演の「伏線」になっている。
 いずれにしても本来テック企業とは見なされてこなかった航空会社のトップが基調講演にリストに入ること自体がCES史上始まって以来初めてであり、そのインパクトはCES 2017のアンダーアーマー(スポーツ用品の製造販売業)のケビン・プランクCEOに匹敵しうるものだ。
 基調講演をライブでぜひもう1社聞きたいという方には、1月8日9:30~のキビ(Quibi)の創業者ジェフリー・カッツェンバーグとメグ・ホイットマンCEOの講演を強く推す。キビは日本の読者には馴染みが薄いかもしれない。ドリームワークスの元CEO、カッツェンバーグが、イーベイやヒューレット・パッカードでCEOを歴任しテック界NO.1の女性富豪の呼び声高いホイットマンと共同で今年4月に創設したモバイル向け動画ストリーミングサービスだ。「プレミアムコンテンツを短時間でつまみ食い」がコンセプトのキビの新サービスに対し、ディズニー、ワーナーメディア、21世紀フォックスなど名だたるコンテンツ企業が1億ドル(約108億円)もの出資を行ったと報道され、一躍、全米のテック業界の話題をさらった。
 基調講演はホイットマンとカッツェンバーグが揃い踏みとなることが発表されていて、「キビが変える短編動画のコンテンツ体験」が45分のプレゼンテーションの主題になることだろう。
 それ以外の企業についても、講演のテーマはテクノロジーや新製品そのもののアピールというよりは、それらによってエクスペリエンスがいかに変わるか、ライフスタイルはどうなるべきかという顧客視点、ビジョンオリエンテッドな内容になるはずで、CESの最近の基調講演の文脈を踏まえたものになると想定される。
CESで痛感、日本のモメンタムが大きく低下
 最後に一言。CESに長年通っていて痛感するのは、民生技術における技術立国・日本の著しいモメンタム(勢い感)低下だ。
 ソニー、パナソニック、シャープ、キヤノンなど日本発のグローバル企業の旗色が良かったのはせいぜい2012年まで。民生技術の花形が大画面液晶テレビからスマートフォンに完全に移行した2014年以降はアンドロイド、iOSというプラットフォームでスマイルカーブの入り口(企画開発)と出口(サービス)を掌握した米国勢に覇権が完全に移動した。

部品調達、製造、納入/販売においてコスト競争で後手に回った多くの日本企業はCESの檜舞台から漸次退場し、韓国と中国の企業が日本の抜けた穴をはるかに上回る規模とスピードでそのポジションを確固たるものとしつつあるように見える。
 スタートアップの育成の土俵でも全く同様の現象が見られる。Tech Westのサンズ会場の1階にはスタートアップ企業を専門的に収容する「ユーレカパーク」(Eureka Park:「ユーレカ」は「見つけたぞ!」「わかったぞ!」という意味のギリシア語)と呼ばれる小間ブース主体の展示会場がある。ここでもモメンタムを感じるのはフランスを中心としたスイス、オランダの欧州勢、続いて中国、台湾、韓国の東アジア勢、それにイスラエルであり、日本企業の存在感は薄い。
 CESの会場外でもショックを受けたことがあった。CES 2019の会期中、ジャケットを買いに訪れたプレミアム・アウトレット・サウスで案内看板を目にしたときのことである(下の写真)。
言語の順序は、アウトレットモールにとっての顧客としてのプライオリティを意味すると思われる。東アジアにおける「中国・台湾 > 韓国 > 日本」という序列は、最近のCESで日本からの視察者が感じる、肩身の狭さと相通ずるものがあるとは言えないだろうか。
 しかし、変化はチャンスであると著者は思う。5G時代になって企業間競争のゲームルールが変わり、事業の成長とSDGsやESGなど社会課題解決の両立を高次元で達成できる企業が最後に勝ち残るとしたら、日本企業にも均等に逆転のチャンスはあるはずだ。
 過去のCESで見つけた小さな「点」と繋がって行くはずの、新しい可能性に溢れる「点」の数々を探しに、年明け早々期待に胸を膨らませラスベガスに旅立とうと思う。

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