第2回シニアメンバー懇親会

第2回シニアメンバー懇親会

2020年2月6日木曜日

今こそ、世界に誇りたい日本の美意識とクラフツマンシップ

環境問題に多様性の向上……。2020年代のファッション業界はどこに向かうのか。

1. ストリートスタイルにおけるトレンドの終焉!?

ラグジュアリーファッションは、より控えめなスタイルへと移行しているようだ。セリーヌ(CELINE)の元クリエイティブ・ディレクター、フィービー・ファイロが在職中に打ち立てた美意識に共感するブランドも多く見受けられる。中でも、静かなる自己主張を秘めたザ・ロウ(THE ROW)への支持の高まりは、それを強く印象付ける。
2010年代には、ファッションにおける昼夜の境界が曖昧になり、大胆なパワーショルダーが復活したかと思えば、その反動として「ノームコア」というトレンドが生まれた。こうした移り変わりを経て、今、ファッションコミュニティは、トレンドという集団的な束縛から抜け出し、新たな10年へと向かおうとしている。

2. ダイバーシティ化の障壁。

リアーナのブランドであるフェンティ(FENTY)サヴェージ X フェンティ(SAVAGE X FENTY)、そしてNYのマリアム・ナッシアー・ザデー(MARYAM NASSIR ZADEH)エクハウス ラッタ(ECKHAUS LATTA)といった次世代ブランドのデザイナーたちは、その思想やものづくりのあり方においてインクルーシビティ(包括性)を重要視している。こうしたブランドの興隆の一方で、ランウェイにおいては特に、この傾向はまだ可視化されていない。ランウェイ用につくられるサンプルのほとんどは、背が高く手足の長いほっそり体型のモデルしかフィットせず、こうした「規定サイズ」から外れたモデルには、分け入る余地がほとんどないのが現状だ。
3. 強調すべきは胸より脇?
2020年代のファッション新時代において重要視されるボディパーツは、「胸の谷間」ではなく「脇の下」のようだ。ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)2020年春夏コレクションや、カイト(KHAITE)のネックラインが脇の下まで大きく開いた「マディ・トップ」、そして、人気急上昇中のブランド、オペラスポーツ(OpéraSPORT)のよる100%再生シルク製の「ドナ」ドレスがその好例だろう。
脇への注目の高まりは、未処理のわき毛を隠すことなく、自分らしさの象徴だとする人々の増加や、彼らをクールだとする風潮が背景にあると考えられる。ボディの多様性が広がる今だからこそ、さまざまな価値観を受け入れる弾力あるファッションの象徴として、「脇」は新たな役割を得たようだ。

4. ジェンダーの壁が完全崩壊?

数年前、当時まだ知られていなかったヴェトモン(VETEMENTS)から登場したパーカーは、アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)以来の衝撃をファッション界にもたらした。ヴェトモンの元ヘッドデザイナー(現バレンシアガ・クリエイティブディレクター)、デムナ・ヴァザリアは、このある種の「郊外ファッション」を感度の高いセレブリティたちにも広め、世界の若者たちのジェンダーレス・スタイルへの願望を代弁したのだった。
ラグジュアリーファッション業界が、この「パーカー革命」とでも呼ぶべき潮流を受け入れるために余儀なく行ったギアチェンジは、世界のファッションの中心地から遠く離れた場所で起きている社会変化への対応でもあった。つまり、シリコンバレーでラフなファッションに身を包んで働く人々のスタイルこそがクールである、という世界の風潮を無視するわけにはいかなかったのだ。
これは、性の違いを超え、従来のドレスコードをディスラプトしようとする2010年代におけるミレニアル世代の価値観の反映であり、それによってファッション界にも、よりオープンな考え方がもたらされた。上の写真でウクライナ版『VOGUE』のファッション・ディレクター、ジュリー・ペリパスが着用しているマッスルベストのリバイバルもまた、そうした時流を証明していると言えるだろう。

5. 突きつけられる環境問題。

2010年代後半から消費者たちは、ファッションの生産過程で生じる環境負荷や人体への悪影響に対して、大きな関心と懸念を抱くようになった。一方、ファッション業界が持続可能性を議論するときには、常に矛盾がつきまとう。例えば、ラグジュアリーブランドの多くが「ファーフリー(毛皮の使用中止)」を決断したが、レザーについては無言を貫いている。このように、さまざまなブランドがサステナビリティについて活発に語れば語るほど、彼らが本当のところ何を目指しているのかがわからなくなる、という混乱が起きているのも事実だ。
ビーガンレザーをいち早く導入してきたナヌーシュカ(NANUSHKA)のように、すでに業界関係者たちの信頼と支持を勝ち取っているブランドもあれば、いくらクリーンであることを主張しても信頼性に欠けるブランドは、「グリーンウォッシュ」の汚名を着せられることになる。
1980年代と90年代に、食物の育成に用いられる化学物質や条件について規定する国際的な法的枠組みがつくられたように、2020年代は、ファッションアイテムの製造過程で生じた環境負荷を品質表示ラベルに明示する、なんてことが義務付けられるかもしれない。

6. 「新しいヴィンテージ」の興隆。

タンスに眠る服の魅力を再発見する人々が増えたことで、「ヴィンテージ」という言葉に新たな広がりがもたらされようとしている。例えば、5年前に買ったトップショップ(TOPSHOP)のジーンズを「マイ・ヴィンテージ」として再び愛用する、というように。確かに、一着の服が数回着用されただけでゴミ箱行きとなるよりは、しばらくタンスの肥やしと化したとしても、その後再び日の目を見ることができる方が服にとっても地球にとってもいいことだ。
新作を求めてオンラインショップをパトロールするのもいいけれど、その前に、まずは自宅のワードローブを見返してみよう。忘却の彼方に置き去りにしていた「RECENTAGE(Recent + Vintageの造語)」なお宝アイテムを掘り起こせるかもしれない。

今こそ、世界に誇りたい日本の美意識とクラフツマンシップ

THE SENSE AND SCIENCE──SENSAI ASシリーズ

日本の美意識と科学に基づくブランド、SENSAIは、1983年にロンドンのハロッズでデビューした。以来、美の本場であるヨーロッパのマーケットで鍛えられ、試行錯誤を繰り返しながら、日本的なスキンケア作法を伝えてきた。先進科学と技術の粋を集めた成分、テクスチャー、香り、そしてベネフィット。約40年もの間、アジアのブランドがヨーロッパで生き残るのは、簡単なことではない。そのSENSAIが、今年9月に満を持しての凱旋帰国。アジア初となる日本デビューだ。

日本原種の高品質で貴重な小石丸シルクの美しさにフォーカス。独自開発の成分・小石丸シルクロイヤルTM※1を配合し、香り、感触、後肌、ボトルデザインまでシルキィフィールにこだわる。右から、美容液のように濃密な炭酸※2泡のローション。毛穴より小さくマイクロバブル化した弾力ある泡状の化粧水が心地よくなじみ、いきいき躍動するしなやかなハリ肌に。センサイ AS マイクロムース トリ ートメント s 90ml ¥18,000 みずみずしい軽さとリッチさを併せ持つ乳液。肌※3にするすると溶け込んだ瞬間に潤いが溢れ、やわらかく艶やかでもちっとした肌に仕上がる。同 AS フルイド 80ml ¥18,000 リッチで濃密なクリームなのに軽やかになじみ、すばやく角層に浸透。乾燥しやすい肌を豊かな潤いで包み込み、ふっくらなめらかなハリに満ちた肌は表情まで輝く。

 SENSAIがインスピレーションを受けたのは、繊維メーカーとしてスタートしたカネボウのシルク研究から導き出された、絹の中でもやわらかさ、なめらかさ、艶の美しさが圧倒的な、日本原種の小石丸シルク。小石丸シルクから抽出した独自開発成分を配合したASシリーズが目指すのは、水分に満たされたような透明感をたたえ、しなやかでキメ細く、繊細な艶とやわらかなハリを秘めたシルキィフィールな肌。年齢とともに多様化する肌悩みにも応える。またSENSAIは、肌を慈しみながら丁寧にスキンケアを重ねていく日本独特のメソッドを提案する。慌しい毎日だからこそ、朝と夜に自分と向き合うリチュアルにも似た時間を。その作法が、肌を超え、存在までも美しい大人を育てるのだ。

伝統的なものが日常に残る日本はコンテンツの多い国。

──日本の感性や美意識が、近年世界でも注目されています。その理由はどこにあると思いますか?

福田さん(以下敬称略)「私は99年に英国に赴任し、以来時期を変えて3カ国を回りましたが、日本に対する関心は高まっていますね。きっかけはお寿司に代表される食文化だったかもしれません。漫画も日本ブームを押し上げ、Jビューティも話題を集めています。興味を持った人たちがインターネットによって深く広く情報を手に入れられる時代。文化を入り口に、日本の美意識や精神性もリスペクトされるようになったのでは?」

小菅さん(以下敬称略)「日本は、食にしても着物にしても、伝統的なものが日常のものとして残っていて、コンテンツがたっぷりある、とても“濃い”国。ものづくりの世界では、よりよい物を作ろうとするクラフツマンシップが受け継がれていて、末端の仕事を担う人まで同じ精神で製作している。AIの時代だからこそ、人の手によって生み出される価値、可能性が見直されている気がします」

福田:「会社や組織の中で人を育成し技術を伝承することも日本文化の強みのひとつ。流動性がないのは負の側面だけでなく、メリットもありそうです。わかりやすいのは料理の世界。欧米は店を短期間で移りながらステップアップする傾向が強いが、日本はひとつの店で長く修業しながら成長する料理人が多いように思います。それもクラフツマンシップがしっかり伝承される理由ですよね」

──それぞれのブランドが世界の市場で評価されたポイントは?
福田:「SENSAIの場合はとにかく品質の良さです。ヨーロッパのお客様からは、“繊細な日本の美意識を体現しつつ、ブレイクスルーのテクノロジーを持つイノベーティブで高品質なブランド”という声をいただいております」

肌の凹凸をフラットに整えメイクくずれを防ぐ下地。フレッシュな透明感を仕込んでくすみをカバーし、ふわっと発光する仕上がりに。センサイ CP ブライトニング メイクアップ ベース SPF12 30ml ¥7,500 クリーミーでなめらかなテクスチャーがピタッと密着。悩み多き肌に寄り添うカバー力がありながら、艶やかであくまでナチュラルなシルクスキンに仕上がる。

小菅:「竹は世界中に生えられているのですが、ものづくりに使われるのはアジアの竹で欧米の竹は使いにくい。特に日本固有の真竹という品種は独特のツヤや繊維な粘り、独自の加工で出る表情があります。“竹がこんな形になるの?” “黒く染めたカゴは見たことない”と驚かれることは多いです」

──では逆に、難しかったことは?
福田:「日本とは化粧習慣がまるで違う点です。日本はスキンケアの売り上げが6割、メーキャップ4割、香り少々ですが、ヨーロッパは5割が香りで残りをスキンケアとメイクが半々。W洗顔もメジャーではなく化粧水も拭き取りに使うのがメイン。だから約40年前、ヨーロッパでSENSAIをスタートした方達は苦労されたと思います。それを欧州のスタイルに合わせる方法もありましたが、私達は良いと信じた日本的スキンケア作法を貫くことを選びました。頑なにではなく、上手にアジャストしながら守るべき信念は貫き、愚直に説明を続けて少しずつ理解していただいています」

小菅:「当社の場合は規模も小さく海外仕様もありません。自分のスタイル、インテリアにどう取り入れるかを自分で考えられる。ただ我々の美意識、価値観を、喜びをもって受け入れられるために、どう伝えるかには苦心しました」

福田:「伝え方は大事です。約40年前、世界から見た日本のイメージはハイテク産業が盛んな工業国。美の本場であるヨーロッパに、名もなきアジアのブランドが乗り込んだのですから、そのままでは通用するわけがありません。私達はまず現地のスタッフの教育に力を 注ぎ、作法、手順、リチュアルがなぜ必要か、そしてメイド・イン・ジャパンのものづくりを長いスパンで理解してもらいました」

期待を裏切らない品質と感性的な心地よさを追求。

両ブランドには、高感度な大人の女性がターゲットという共通点が。1センチの感覚にこだわる女性の感性に寄り添う製品作りを意識。

──製品づくりの、こだわりは?

福田:「一番大切にしているのは安全性。そしてレベルを落とさず、期待値を裏切らない品質です。良いものを作るのはもちろん、長く使っていただきたいので数値には表せない感触や香りなどの心地よさにもこだわっています」

小菅:「家業を継いだ15年前は、まさに“どん底”。生き残るために時代に適応しようとしても伝統工芸のイメージが強すぎて受け入れられず……。2010年にデザイナーの小泉誠さんとコラボしてから風向きが変わりました。僕は、プロデュースが主な仕事。凝り性できれいなものが好きな自分が“これは良い”と自信を持って言えて、説明なしに感覚的に喜んでいただける製品づくりを意識しています」

福田:「勝利の方程式はないけれど、生き残っている商品にはユニークな個性という共通点が。そこにバリューチェーンや人の力が加わってロングセラーになるように思います」

小菅:「結局はどこまで使う人の立場に立てるかだと思うんです。僕は4年前から生け花を習っているのですが、やってみて、公長斎小菅の象徴でもある伝統的な花かごに使いにくい点があることに気づき、1センチで反応が変わる女性の感覚にも敏感でいなければと」

──この先、目指したいのは?

小菅:「日本人の生活に深く根づく竹は、100年前のかごもいい状態で残っているほど、強度があり経年変化で味わい深くなる、世界的に見てもユニークな素材。職人さんが減る一方という伝統産業の難しさはありますが、今の目標はとにかく竹産業をメジャーにすること。日本の美しい民族衣装である和装をイメージしつつもモダンな竹かごバッグなど、今の気分に合う製品をプロデュースしブランドとしての認知度を上げながら、新しい価値を創造したい」

福田:「日本の繊細な美意識をどう発信するか。西洋的なラグジュアリーとは一線を画す、ジャパニーズラグジュアリーの削ぎ落とした静的な美と、イノベーティブな先端科学の融合。肌を磨き上げるのはもちろんですが、気持ちが満たされて生活の質まで向上するような内面的な美しさにも寄り添えるブランドでありたいです」



バブルから令和まで"働く女のファッション史"

新元号となり“令和”の時代を迎えて、働く女性の意識とビジネスファッションはどう変わっていったのか。あらためて平成を振り返り、2人の識者に話を伺いながら、分析します。

■派手色スーツでキメた女性が闊歩した80年代

金ボタンが並ぶ肩パッド入りのボディコンスーツに身を包み、ウエストは太ベルトでギュッとシェイプ。ゴージャスなチェーンバッグを肩にかけ、ピンヒールでさっそうと歩く……。今では信じられないが、バブル全盛期の1980年代、こんな派手なファッションで通勤する女性が多くいた。

「当時はデザイナーズブランドが大ブーム。女性だけでなく、肩パッド入りのソフトスーツで仕事する男性の姿も見られました。服飾史の視点から見ると、好景気ほど男性は男性らしく、女性は女性らしい装いになるといわれています。経済とファッションは緩やかにリンクしていて、景気の波とともに女性のビジネスファッションは少しずつ変化を遂げているのです」(共立女子短期大学教授・渡辺明日香さん)

今では揶揄されることも多いこの時代のファッションだが、働き方という観点から見ると、バブル期はポジティブで明るい時代だった。

「やればやるだけ評価され、成功体験となって積み重なるぶん、仕事へのネガティブイメージがない。今でもバブル期入社の方々と話すと、『仕事は楽しいもの』というムードが伝わってきます。そんななか、86(昭和61)年に施行されたのが『男女雇用機会均等法』。これを機に、第1次女性活用ブームが起こります。

それまで、女性は男性の補助的業務を担っていたのが、“一般職”と“総合職”という呼称が誕生。女性のキャリア形成にコース分断が生まれたのです。総合職の第1期生は、89~90年ごろに入社した、現在50代前半のパイオニアの方々。まだその頃は企業に余裕があり、社員にどんどん投資した時代でした。女性社員を海外留学させる商社や銀行もあり、時代の恩恵を存分に受けていたのです」(リクルートワークス研究所人事研究センター長・石原直子さん)

■景気の後退とともにカジュアル化が進む

80年代後半から90年代にかけて、渋谷に集う若者から発信され、爆発的トレンドとなったのが“渋カジ”。これ以降、キレカジ、デルカジ、フレカジなど、ファッションのカジュアル化が浸透していった。そのトレンドを受け、オフィスでも渋カジのキーアイテム、紺ブレが流行。タイトスカートやシルクスカーフを合わせ、きれいめのトラッドスタイルを実践する女性を見かけるようになる。

「バブル経済は92(平成4)年に崩壊したとされますが、ビジネスファッションはまだその薫りを残しながら、ゆっくりとカジュアル化が進んでいきます。好景気のときとは逆で、景気に不透明さが増すと性差が縮まり、ユニセックス化が進みます。たとえば、オイルショックや環境問題が表面化した70年代は、男性が長髪にしたり、女性がデニムをはくなどの動きがありました。90年代も男性のロン毛が流行ったり、女性が紺ブレやチノパンを取り入れたりなど、男女差のない装いが増えてきたのです」(渡辺さん)

■就職氷河期、そして派遣社員の台頭へ……

不景気の波とともに、就職市場もどんどん冷え込んでいく。ほんの数年前は多くの企業から内定が出ていたものが、全滅という女性も現れるようになってきた。

「2005(平成17)年まで続く、就職氷河期の到来です。特に女子大生にとって超氷河期となりました。さらに1990年代後半には、大手商社をはじめとして、一般職の採用を取りやめる企業も出てくるほど。景気の悪化とともに、一般職を採用するなら派遣社員の採用に切り替えたい。多くの企業がそう考えるようになってきたのです」(石原さん)

女性は正社員としてバリバリ働くか、はたまた派遣社員となるか。2000年という節目をまたいで、時代は大きく変わっていった。

■産んでも辞めずに働くワーキングマザーが増加

新世紀を迎え、マニッシュなパンツスーツが働く女性の新定番に。
「そこで各アパレルメーカーが提案したのが、女性らしいパンツスーツ。ウエストを絞ったショート丈のジャケットに、フルレングスのパンツを合わせ、スタイルアップして見せる工夫を施したのです。時代とともに生地も進化。ストレッチ素材を使用した動きやすく働きやすいスーツが女性の味方となりました」(渡辺さん)
一方、銀行の統廃合で空いた土地に海外資本が目をつけ、ラグジュアリーブランドの旗艦店が東京・表参道、銀座に軒並みオープン。フェミニンな装いも復活の兆しを見せる。
「07(平成19)年の『改正男女雇用機会均等法』施行などを機に、制服廃止が広がります。するとストッキングではなく素足、パンプスではなくサンダルやミュールなど、ビジネスファッションの多様化が進行。エビちゃん、もえちゃんOLが話題になったのもこの頃ですね」(渡辺さん)
女性の働き方に大きな影響を与えた、03(平成15)年施行の「次世代育成支援対策推進法」にも注目。
「これを機に第2次女性活用ブームが盛り上がります。主軸は『産んでも働ける社会に』。産休、育休、復職までのサポートとケアが一気に手厚くなりました。オフィス内でのワーキングマザーの比率がどんどん上がっていったのです」(石原さん)
未婚・既婚、子どもの有無、総合職、派遣社員……さまざまな女性がオフィスに混在する時代となった。

■内閣も後押し、女性活躍推進が本格化

10年代のファッションは“ノームコア(※1)”“アスレジャー(※2)”へ。着心地がよいものをオンオフ問わずに着るスタイルが定着していく。
「オフィスでは、エレガントさを醸し出し、足さばきもよいガウチョパンツがブームに。またライダースジャケットやレーススカート、休日にも着回しできるセットアップなど、ビジネスファッションの私服化が進んでいきます」(渡辺さん)
そんななか、13(平成25)年に安倍内閣より「日本の成長戦略に女性の社会進出が必須」と発表される。
「この発言は確実に女性活躍を後押しするきっかけになりました。さらに16(平成28)年には『女性活躍推進法』が施行。企業が問題点を把握し、改善目標を数値化し、結果を公表するようになり、女性管理職も少しずつ増えてきました」(石原さん)

■働く女性の激動の時代だった


産んで働く“ケア”から、結果を出して働く“フェア”へ。平成は、働く女性の激動の時代だったのだ。
「令和は自分で働き方を決める時代。ビジネスファッションは名刺代わりとなり、キャリアに影響を与えます。そこでPW(※3)世代が意識したいのが、ベストなサイズ感と上質な素材感。1度自分を客観視することをおすすめします」(渡辺さん)
「令和時代の働くキーワードは、多様化、自立、柔軟性。そこで必要なのが“真のリーダーシップ”です。それは力強く人を率いる力ではなく、人の力を借りる力。チームで仕事をし、人の力を借り、時には自分の力を差し出す。年齢を重ねたPW世代なら、なおさらその力が必要になってくることでしょう」(石原さん)
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渡辺明日香(わたなべ・あすか)
共立女子短期大学教授
共立女子短期大学生活科学科教授。ストリートファッションの定点観測、若者のファッションやライフスタイルの分析などを行う。




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