第2回シニアメンバー懇親会

第2回シニアメンバー懇親会

2020年1月3日金曜日

子どもとSNSの健全な関係

子どもとSNSの健全な関係を実現するために親がすべきこと

参照元:デジタルエージェンシー・FICCの会長を務める、荻野英希氏による寄稿コラムと
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子どもがいる方に質問します。
  • 小中高生の子どもはいますか? 
  • 子どもはSNSを使用していますか? 
  • 子どもが使用しているプラットフォームを知っていますか? 
  • 子どものアカウントをフォローしていますか?
  •  SNSの使用について子どもと定期的に話し合っていますか? 
  • 子どもがSNSと健全な関係を持ち続けられると確信できますか?
 私たちの頃とは違い、今の子どもたちはSNSによってネットワーク化された世界に住んでいます。彼らは、先例がない環境で成長し、またその大半は何の指導も受けていません。SNSの使用には様々なリスクがある一方で、子どもにとっての成長機会もたくさん存在します。私たちはこれを正しく理解し、子どもとSNSの健全な関係を実現しなければならないのです。
 18才以下の子どもは世界のインターネット人口の3分の1を占めており、SNSは彼らに合わせて設計されていると言っても過言ではありません。友達作り、人間関係の維持、自己表現、インスピレーションを得るための情報収集を可能にするするSNSは、彼らの生活に必要不可欠なライフラインです。人間の根本的な欲求を表すマズローの欲求5段階説に当てはめれば、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求などの高次の欲求を満たしていることがわかります。
 ほとんどの子どもたちは、自分がSNSのリスクを問題なく回避できると信じています。多くの欲求を満たす目前の機会に魅了され、自身の脆弱性を軽視してしまうのでしょう。子どもたちのSNSの使用を強制的に制限することは簡単です。しかし、それはリスクの回避だけでなく、彼らの成長機会を奪うことにもつながります。ネットワーク化された社会で彼らが充実した人生を実現するためには、対面ではないオンライン上のコミュニケーション能力も高める必要があるのです。
 SNSの禁止や制限は機会を奪うだけでなく、子どもの成長に有害な影響すら及ぼしかねません。台湾では過去に公的にSNSの使用を制限したことで、現在では深刻なインターネット依存の問題に直面しています。依存性を強めることに加え、SNSの禁止や制限は子どもが親の干渉を避け、行動を隠す原因にもなり得ます。
 子どもは大人に比べて自制心が弱く、同調圧力の影響を強く受けます。ティーンエージャーの4人に1人は疎外感を感じないためにほぼ常にオンラインな状態であり、互いの生活を確認し続けています。インスタグラムのいいね!などは彼らの脳内報酬系を活性化させ、セックスやお金について考えと同じ反応をします。これがSNSに関する適切な教育が欠かせない理由です。節度を保つこと、対面の会話やスマートフォンを使わない時間の重要性などを子どもに教える必要があります。
 子どものSNS使用に対する親のあり方は3つのグループに分けられます。1つめのグループは、子どものSNSやスマートフォンの使用を最低限に抑える「リミッター(制限する親)」です。このグループは、子どもの成長に対するテクノロジーの悪影響を恐れ、ことあるごとにその使用を控えさせようとします。3つのグループのうち、問題行動の可能性が最も高いのがリミッターの子どもです。彼らは、他のグループの子どもより2〜3倍の可能性でアダルトサイトのアクセスや、誹謗中傷、なりすましを行います。
  • メンター:テクノロジーの使用に関する指導を積極的に行う。SNSで子どもとつながり、関わりを持つ。定期的にソーシャルメディアの使用について子どもと話し合う。
  • エネーブラー:子どもに自由にSNSを使用させるが、子どもに必要な教育は与えない。
  • リミッター:テクノロジーの使用を最低限に抑える。その子どもは3つのグループのうち、問題行動の可能性が最も高い。
 それとは対照的に「エネーブラー(可能にする親)」は、自分よりも豊富な知識を持つ子どもに自由にSNSを使用させます。このタイプの親は放任的であり、子どもと定期的にSNSの使用について話し合うことはなく、子どもが責任ある行動をするために必要な教育を与えることはありません。
 「メンター(指導する親)」は、子どもにテクノロジーの使用に関する指導を積極的に行います。このタイプの親は、定期的に責任あるSNSの使用方法になどについて子どもと話し、子どもに適したデバイスやプラットフォームを一緒に検討します。さらにSNS上で子どもとつながり、一緒にその使用を学び、楽しめる機会を作ります。
 十分な知識のない親にとってスマートフォンは未知の世界への扉のように見えるかもしれません。しかし、SNSは良い影響も悪影響も存在する、単なる(新しい)環境にすぎません。他の環境と同様に親の役割は変わらないのです。制限を設けること(子どもは親の制限を必要としていますし、それを期待しています)。思いやりを教えること。関わりを持ち、話し合うこと。 子どもの友達が誰なのか、そして友達とどこに行くのかを把握すること。すべて親として当たり前のことです。 
 子どもとの話し合いは、問題行動の兆候を見逃さないためにも必要です。新しいつながりを作ることはSNSの中心的な機能であり、子どもが見知らぬ人と接触することを防ぐことはできません。親は子どもとの話し合いの中で問題行動の兆候に気付き、適切な指導を行う方法を学ばなければなりません。問題行動の兆候や指導には以下のようなものが含まれます。
兆候:
  •  特定の人物から頻繁に多くのメッセージを受信している。
  •  違うプラットフォームでつながるように求められている。
  •  会話を秘密にするように求められている。
  •  デジタルデバイスが使用される環境または状況について尋ねられる。
  •  性的なコミュニケーション、誹謗中傷、または倫理観に反するやりとりが行われている。
  •  家庭、学校、友人関係などの個人情報を開示するよう求められている。
指導:
  •  見知らぬ人が接触してきた場合、どう対応すべきか?
  •  見知らぬ人が子どもの友人や信頼する人を知っていると主張した場合はどうすべきか?
  •  子どもはどんな時に、大人に助けを求めるべきか?
 ロールモデルとしての親の手本は、子どもの行動に大きな影響を与えます。子どもは、誠実に行動しない親の言うことは聞きません。子どもの行動に影響を与えようとする前に、自らのスマートフォンやSNSの使用を制限し、ネット上のエチケットに注意を払いましょう。
子どもはあくまでも子どもなので、いずれSNSの使用でなんらかの間違いを起こします。適切に対処すれば、間違いは教育の機会にもなり得ます。しかし、ネットいじめ、プライバシー問題や「セクスティング」は彼ら一生のトラウマになりかねない為、未然に防止しなければなりません。子どもの安全を守るためには、彼らが自らの意思で責任ある行動をするように、道徳性を発達させる必要があります。

 人間の道徳が、段階を追って発達するプロセスを描くローレンス・コールバーグの道徳性発達理論は、親と子どもがこの問題に取り組む方法を知る上での手がかりになります。現状の子どもの道徳性が何によって保たれていて、どのようなリスクが存在するかを理解することができるでしょう。

 テクノロジーの進化に追いつこうとすることは無意味です。専門家でも遅れをとらないことは不可能ですし、その進化は今後も加速し続けます。私たちは最新の技術的知識ではなく、いつの時代でも子ども達が正しい価値観を持てる教養を与えるべきなのです。子どもとの信頼関係を育むことが、彼らの行動を理解し、導くための唯一の現実的な方法です。
 親は、子どもたちとの「win-win」な関係をメディア合意書としてまとめることで、彼らに人間関係を育む自由を与えながらも、責任ある行動を奨励することができます。メディア合意書は子どもとの話し合いをもとに作成すべきですが、以下のような内容が考えられます。
子ども
  •  親の許可なしに新規のアカウントを作成したり、個人情報(氏名、生年月日、住所、電話番号、写真)を第三者に提供しません。
  •  家族以外の人とパスワードを共有しません。デバイス、アカウント、プロファイルのプライバシー設定は家族と一緒に設定します。
  •  プレッシャーや不快感を感じる、または不適切に思えるコミュニケーションは直ちに停止し、家族に伝えます。
  •  他人をいじめたり、屈辱したり、動揺させたりする可能性のある情報やファイルを共有しません。友人や知人のこのような行動も容認しません。
  •  自分の評判を損なうような情報やファイルを投稿しません。投稿されたものはすべて共有でき、永続的な結果をもたらす可能性があることを理解します。
  •  他人の肖像権や著作権を侵害しません。他者が権利を要する情報やファイルを共有する際には出典を明記します。
  •  ネット上のすべての情報を鵜呑みにせず、情報源の信頼性を考慮します。だれかをだますために、虚偽の情報を共有や投稿はしません。
  •  家族と一緒に合理的なソーシャルメディアの使用制限を設定し、それに従います。他の活動やSNS以外での人との関わりを楽しむことを忘れません。

  •  子どもにとってのSNSの重要性を理解し、受け入れます。
  •  SNSやスマートフォンの使用に対する懸念点を話し合い、理由なく行動を制限したり、禁止したりしません。
  •  子どもの興味を受け入れ、一緒に適切なメディアを探し、その使用を楽しみます。
常識ある行動をとれれば、子どもがSNSを使用することは何も問題ありません。SNS上の人間関係は、現代の子どもの成長には不可欠であり、彼らの個性を形成します。これはSNSに限らず、彼らの人生にわたって様々な人間関係の構築に役立つはずです。

 私たちの親としての役割は、決してスマートフォンを取り上げることではなく、子どもにその正しい使い方を教えてあげることなのです。SNSやスマートフォンなどのテクノロジーの影響を正しく理解し、子どもと健全な関係を育むためには以下の書籍が大きく役に立ちます。子どもを守り、指導する立場であるからこそ、積極的に学びましょう。

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