第2回シニアメンバー懇親会

第2回シニアメンバー懇親会

2020年1月3日金曜日

国際学力調査 生き抜くための読解力を


国際学力調査 生き抜くための読解力を

 経済協力開発機構(OECD)が79カ国・地域の15歳を対象に昨年実施した学習到達度調査(PISA)で、日本の高校1年生の読解力は15位だった。調査は3年ごとに行われているが、読解力は2回続けて順位を落とした。

 文部科学省は根拠を示して考えを述べる力に課題があると指摘。パソコンでの出題に不慣れだったことも一因とみている。今後は子ども1人にパソコン1台の学習環境を整える政府方針を推進することで挽回を図る構えだ。5日閣議決定した経済対策にも、約2300億円の予算案が盛り込まれた。

 PISAはこれまでも、日本の教育政策に大きな影響を及ぼしてきた。2003年調査で成績を大きく下げた際は、「ゆとり教育」の方針を転換するきっかけとなった。今回大切なのは、人生を生き抜くために必要な読解力を子どもにどのように身に付けさせるかだ。調査結果を冷静に検証した上で、適切な手順を踏んで教育の改善につなげてもらいたい。
 OECDは今回から、読解力調査の方法を大きく変えた。情報の質や信ぴょう性を判断する力も読解力だとして、ネットニュースや電子メールといった多様な文章を題材とした。フェイクニュースや誹謗[ひぼう]中傷をあおる書き込みがインターネット上にあふれている現状を踏まえ、これからの社会を生きるには情報の真偽を見抜く力が欠かせない、との判断からだろう。
 これに対し、日本の高校生が授業でデジタル機器を使う時間は、OECD加盟国の中でも最低レベルだ。慣れない出題形式に戸惑ったことは想像に難くない。しかし、順位低下の理由をそれだけに求めては間違いだろう。
「文章を多角的な視点から正確に読み取る」という本質的な力の不足を真摯[しんし]に受け止めるべきだ。 日本の国語授業は作者の意図を読み取る活動が中心で、複数の文章を読み比べ、自分なりの考えを築き上げる力の育成が足りないとの指摘もある。文章の中から正解を探すだけでなく、分析力や想像力を育む指導が必要だ。前提として、教科書の長文を的確に読めているのかを確認し、文法の誤りをただすなどの論理的な指導も欠かせまい。
 一方で、家庭環境による「情報格差」の問題も軽視できない。経済的な理由でデジタル機器に触れる機会に乏しい子どもが、必要な読解力を身に付けずに社会に出るようなことがあってはならない。
 デジタル機器の取り扱いに加え、情報を正しく読み取る力(メディアリテラシー)も備えた教員の育成確保も急務となろう。文科省は一層踏み込んだ対策を講じるべきだ。

 今回の調査では、本や新聞をよく読む生徒ほど読解力の得点が高いが、そうした生徒は減少傾向にあることも分かった。新学習指導要領は論理的な文章の指導に力を入れるとしているが、ジャンルにとらわれず、幅広く活字に親しむことの意義にも目を向けてもらいたい。

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